研究員の石橋です。こんにちは。
Web 2.0 Expo 2008 San Francisco について、数々のセッションレポートをお届けしてきましたが今回はやや趣向を変えて、カンファレンスに参加した石橋が肌で感じた会場の雰囲気、Web 2.0 が何なのか、どこへ向かっているのか等々について、主観で語った感想・雑感をお届けします。
Web 2.0 に対する2種類の期待
* photo by duncandavidson @Flickr
ETech 2006 ~ ETech 2007 ~ そして今回の Web 2.0 Expo 2008 S.F. と、ここ3年間これら Web 2.0 系カンファレンスに参加し、その空気感・雰囲気を肌で感じてきました。その上で、一番印象に残るのは
皆の Web 2.0 に対する "期待" は2種類ある
という事です。
1. 未来ビジョンとしての期待
- 新しい事をしたい / 新しいものを創りたい
- 楽しい事をしたい / 楽しいものを創りたい
- 新たな生活スタイルを生み出したい
- 新たなコミュニケーション方法を試したい
- Webのポテンシャルを引き出したい
- 自分が思い描く "世界観" を形にしたい
- そんな想いを、皆と共有したい
エンジニア、デザイナー、プランナー、起業家 (entrepreneur)、投資家... 立場は違えど、こんな未来ビジョンに対する期待感と共感、そしてその上での "情熱" を会場では最も強く感じ取れる気がします。ETech 2006 / 2007 のセッションの多くは "新しい事を試して、ある程度うまくいった事例の共有" - 37 signals / Ruby On Rails、Technorati、Last.fm、Flickr、del.icio.us、Smugmug、Wikia、Amazon WebService、Facebook - あるいは "新しい思想やチャレンジの共有" - 英国BBCの映像アーカイブWeb公開、Amazon Mechanical Turk、Second Life、Yahoo! Developer Network & UI Library、Google Earth、OpenID (Sxip) だったのが印象的。 (Mechanical Turk とか Secondlife とか、その後うまくいっていない事例もありますね^^;)。そういった流れでは、今回の Web 2.0 Expo 2008 San Francisco のセッション構成は多少、この未来ビジョン路線の比率は減ったものの、Microsoft Live Mesh や Yahoo! OS (Open Strategy)、Metaweb freebase、Google App Engine、 その他ビジョン提示系の Keynote 含め、依然熱気覚めやらぬといった感が充分ありました。1点、ここ1年で Twitter 以外の "画期的な事例" に欠けている事の寂しさ (?) が、そのまま会場 (特にKeynote) の空気感として伝わってきた気もしますが。
* photo by duncandavidson @Flickr
なにより、Tim O'Reilly 氏自らの Keynote は、100% この "未来ビジョンに対する想い" の共有と共感を促す熱い内容でした。
自分はどうありたいか。
どんな未来を築きたいのか。
個々はそのビジョンをしっかり抱いた上で、日々確実にアクションを起こしていこう
という強いメッセージ。
2. ビジネスチャンスとしての期待
- 新しい・大勢の人が集まる場は、換金化のチャンス
- 広告以外のビジネスモデルの模索
- 消費者 / ユーザーひとりひとりの行動や趣向を把握したい
* photo by duncandavidson @Flickr
投資家や、マーケティング / コンサルティング系の参加者向けに、このようなビジネスチャンスとしての Web 2.0 を語るセッションも今回のカンファレンスでは多く見られたのが印象的。参加直前、セッション一覧を眺めてビジネス系セッションの多さを確認した際は、今年はしっかり「ちゃんとビジネスにもなっています」というメッセージを全面に押し出すのかと期待しました。3-4本、投資家 (VC) の方々やマーケティング専門家の方々のパネルディスカッション (セッションというより対話形式がほとんど)を聞いた限りでは:
- 「大勢の人が集まる場を作れれば、ビジネスになる」と信じたけど、僕らの場合は残念ながらうまく出来ませんでした。足でしっかり広告枠営業がんばりました。
- アフィリエイトやアドネットワークは、胴元乱立・ユーザー拡散の途を辿り中で、儲けるのが難しくなっている
- ビヘイビアターゲティングはまだ試行錯誤中
- 昨今の Social Media においては、マーケティングやターゲティングがとても複雑かつ重要。なので僕らがアナタの助けになります (by 講演者のコンサルタント)
等等と、どちらかというと
「キミもボクもやっぱり大変!」といった、情報共有の場
という感が強かったです。でもそこで落胆するわけでは無く、聴講側からのQ/Aでも「うちも同じようなケースで苦労しています。お互いがんばりましょうね」なんてコメントも出てきて、皆パッションも改善意欲もある感じでした。
未来ビジョンに期待・共感して、明日からまた行動を起こしていきたい
ビジネス化 (換金化) したいけれど難しい、多くの Web 2.0 成功事例は Google / Yahoo! / Microsoft ら大手企業 (the giant) に買収されるケースが多い現状があります。
Web 2.0 に対して「ビジネスチャンスとしての期待」を多分に抱いている方がこれを見ると「Web 2.0 は終わった」「Web 2.0 はただの誇張」になってしまう
のだと思います。
* photo by duncandavidson @Flickr
でも、前述の通り Web 2.0 にはもうひとつの側面「未来ビジョンとしての期待」があります。カンファレンスのセッション比率はこっち系統のものが多いこと、Tim O'Reilly氏の基調講演メッセージ、カンファレンス参加者用 SNS の用意 (CrowdVine)、公式カメラマンによる写真の転載許可 (via Flickr)、カンファレンス終了翌日に全基調講演のストリーミング動画を公開する等、身をもって "openness, mind of share" を実践する運営側の姿勢、web2open イベントや会場廊下のあちこちで熱く語られている「僕 web 大好き」トーク。今回のカンファレンスの来場者は 5-6000 人規模だったそうですし (主催者TechWeb関係者の方談)、半年後の Web 2.0 Expo @New York に対するセッション登壇応募数は総数691件もあったそうです (Web 2.0 Expo Official Blog より)。ブログが普及し始めて、Google Maps に度肝を抜かれて... Web 2.0 の潮流が見え始めた数年前 (2003 - 2004年頃) から、こうして依然盛り上がり冷め遣らないのは、
Web 2.0 が提示する「未来ビジョン」に共感する人々が後を絶たないから
でしょう。あ、あと「面白い事」「新しい事」がみんな大好きというのもありますね。
同じ未来ビジョンに期待しつつ、起業家は日々資金繰りとアイディア出しに奔走し、投資家は才覚ある人材との出会いと活動の機会を与える事に勤しみ、デベロッパーは質の高いサービスの創造に専念し、マーケティング/コンサルの方々はより多くの人々を業界に巻き込む。個々がそれぞれ自身の領分のアクションを起こし続け、それらの相互作用・相乗効果で、これからもこの潮流は脈々と大きくなっていくのだろうなぁと。今回参加して、同じビジョンを持つ仲間達と一緒の時間を過ごす事で、そんな確信と勇気を得られたのが最大の収穫であり、参加する一番の価値だと思っています。
* photo by duncandavidson @Flickr
リクルートの一員として
リクルート執行役員 冨塚 優さん が社内報のコラムにてこんな事おっしゃっていました:
想いを皆で語り合おう。そしてより良い社会を目指すのが僕の想い。
組織運営をする立場になって、僕が大切にしていることがあります。一つ目は、一人ひとりが「自分はこうありたい」と、ありたい姿を考え、それを話し合える組織にしていくこと。
「Shared Vision」= 皆で想いを共有しあうことで、自然と『ビジョン』は生まれてきます。(中略) 皆で、より高次元な世界観を創っていきたい。だから僕は、一人ひとりが想いを持ち、語り合うことが大事だと思っている。
プレイヤーとして力をつけることは大事。でも、「収益を上げよう!」とは考えない。ありたい姿を描き、正しくクライアント・カスタマー価値を上げれば、結果として収益は上がる。意図的に上げようとすると、必ずどこかにひずみが出るもの。結果として収益が上がることが社会との調和という面で大切なんだよね。
個人的には、「面白い」という言葉が多く出る会社にしたいんだ。「面白い」という言葉は、面(顔)が白くなる = "発見" がある状態。似ているけど「楽しい」は「楽(らく)」って書く。業務は楽(効率化)にし、「面白い仕事」を増やし、社会を「美しい状態 (見返りを要求せず、結果として収益が上がる)」世界にしたい。青臭い?でも、僕らがそういう視座で見ていないと、未来は生み出せないでしょ(笑)?
※社内報 かもめ 2008/5/1 号 p.14 特別企画 - 49期執行役員紹介 - より引用
このような方が経営陣に居るリクルートという大きな組織の中で、僕らはこれからも熱い想いを行動に・カタチに変えていく次第です。
関連情報
- Tech Mom from Silicon Valley - グーグルやマイクロソフトは「メディチ家」か
- "今年のWeb2.0Expoは、予想通り、昨年より大幅に盛り下がっている""最終的にグーグルかマイクロソフトに買ってもらうことを目的に起業しているし、投資家もそのつもりでいるだろうと思う""昨今のWeb2.0を見ていると、なんだか「メディチ家に庇護されている芸術家」みたいな気がしてくる。" - Tech Mom michikaifu によるリアリティあふれるすばらしい考察です (苦笑)。石橋感想: もっともっと、メディチ家的役割な方々が増えていきます。
- Web担当者Forum - 「グーグルは酸素でありエコシステム」――ウェブ2.0エキスポに見たWeb 2.0産業論
- 同じく Tech Mom michikaifu 女史が書かれた、去年の Web 2.0 Expo 2007 のレポート記事。こちらも秀逸な考察。
- マイコミジャーナル - Web 2.0 Expo - オライリー基調講演「Webの拡大チャンスはエンタープライズ、クラウド、モバイル」
- Tim O'Reilly 氏の基調講演の解説








