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本音で語る新規事業の舞台裏 サイバーエージェント ×MTL勉強会

2016/01/04

12月22日(火)。Media Technology Lab.が運営するMTL caféにて勉強会が開催されました。講師は株式会社サイバーエージェントからおふたり。同社の社内ベンチャー 株式会社シロク代表取締役であり、新規事業研究会(NABRA)の責任者でもある飯塚勇太氏と、同じく社内ベンチャー 株式会社 渋谷クリップクリエイト CEOの桑野俊一氏。それぞれの事業をベースに、起業から現在までの貴重なお話を伺いました。
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<左より、株式会社 渋谷クリップクリエイト CEOの桑野俊一氏、株式会社シロク代表取締役 飯塚勇太氏>

事業をはじめたきっかけ

まずは、事業をはじめたきっかけから。飯塚氏は内定者からいきなり子会社の社長に就任した異色の経歴の持ち主、その経緯はどのようなものだったのでしょう。

飯塚氏「サイバーエージェントに内定が決まっていた大学4年生のとき、アプリを開発したらヒットしました。社長の藤田に、それをサイバーエージェント社内で会社化しないか? と言ってもらったのが設立の理由です。」
それは異例なこと? との問いに「当時21歳だったので最年少記録ではありました。ただ、新卒1年目の社員が社長になるケースもあるので、それほど珍しいことではありません。」と。

さらに、もともとサーバーエージェント内で会社化するという計算があっての開発でしたか? との問いには、それはほとんどなかった。同社と面白いことができたらという思いはあったと話してくれました。

一方、桑野氏はというと「5年ほどAmebaという大きな組織で働いていましたが、新しいことに挑戦したいという思いが募りました。タイミングよく、藤田が新しく動画系の事業をはじめるにあたり推進者を募ったんです。それで手を挙げ、4日後には決まっていました。」さらに「新規事業を生む仕組みは別にありますが、基本的に誰に任せるかは挙手制なんです。」と話してくれました。

自身で起案したものじゃないということで、もともと動画に興味がありましたか? と問われると「実は構成作家を目指していた時期があります。鈴木おさむが社外取締役なので言いづらいのですが。」ずっと動画をやりたいと思っていたので、迷うことなく手を挙げた当時の心境を話してくれました。

事業の評価基準

次の質問は、投資や事業撤退の目安になる評価基準について。KPIなどは、どのように定めるのかといった質問があがりました。飯塚氏から「領域に関わらず、どの事業にも適用される共通のものがあります。何段階かのステージがあり、上を目指すのですが、その指標は営業利益など明確化されています。撤退は一定の金額を使い切っているのに成果がでない、同じステージに4Q連続で留まっている、ステージを落ち続けている、といったもの。目標をひとつでも外すと撤退。けっこうシビアです。でも、実は社長の力量次第でもあります。僕は何度か危機的状況に陥りましたが、継続希望のプレゼンを粘りづよくし、ステイしています。」という話がありました。

乗り越えてきた困難

また、事業をやっていて苦しかったことについては、
桑野氏「動画PR事業ということで、現場は人気のあるユーチューバーやゲームクリエイターに制作を依頼していますが、最初は内製しようと考えていました。機材を買い、毎晩ネタを考えては撮影していたんですが、辛かったですね。誰もみてくれないし、センスないし。もともとやりたいことではなかったので。」との話。
どのように乗り越えたのかを問われると「1ヶ月半集中してやったので、別の考え方が必要と気づいたのだと思います。中途半端な気持ちだったら気づくのも遅くなり、取り返しのつかない状況になっていたかも。やりきったうえだったので、舵を切れました。」と話してくれました。

一方、飯塚氏は社長に就任した経緯にもつながる苦労を話してくれました。
「会社の成り立ちが特殊で、僕には社会経験がありません。そして、上司は藤田しかいませんでした。判断に迷うことを藤田に聞くと、勝手に決めてと基本的に言われます。しっかりとしたビジネスマナーなどを知らず、営業したことないまま営業にいきました。このあたりが大変でしたね。」

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組織運営、採用について

次に、組織運営や採用の裁量権については、
飯塚氏「あまりに赤字のときに採用かけると本社からストップがかかりますが、基本的には自分で決めることができます。組織運営で意識しているのは、友達同士ではじめた会社なので、今後も仲良し関係を前提にしようということ。それと、自分は基本的に何もやらない。半年いなくても会社が成長するようにしています。」
桑野氏は「会社は社長の鏡だという考えのもと、自分の意識や振る舞いには気を使っています。あらためてスローガンを掲げ、戦略に反映するというよりも、普段の行動から。文化をつくるのは、社長の基本的な振る舞いや価値観だと思っています。」

今後の方針

そして参加者の多くが気になっていた今後の方針について。
桑野氏「1年前に挫折したオリジナルソフトに注力したいと思っています。あの頃は気合いだけでしたが、いまは知見もたまり、内製の力もついているはず。オリジナルのソフトをつくり、収益の柱にしたいと思っています。」

飯塚氏は「“○○の会社“といった時点で可能性が損なわれると思っているので、節操なく、新しいことをやり続けると決めています。B2BもB2Cも、webもアプリも、なんでもやりたいですね。」と。

さらに「事業を通して実現したい世界とは?」の問いには、

飯塚氏「新しいあたりまえをつくる。商売は世の中のニーズありき、ヒットすれば社会的にも価値があるという認識なので、そこはあまり意識せず、逆にメンバーが楽しいかどうかを大切にしています。向上心をもってやっているかどうかを重視。みんながやりたくなさそうなことはやりません。」と。

対する桑野氏は「三谷幸喜監督の『マジックアワー』に衝撃を受けたんです。面白い映画だけど、観なくても生きてはいける。でも、観れば人生が豊かになる。エンターテイメントの真髄ですが、そういう仕事がしたいと思っていますし、僕がつくる組織も、そういう体験を提供できる存在を目指したいと思っています。」

参加者へのメッセージ

そして最後に、新規事業をやっている、やろうとしている人へのメッセージ。

飯塚氏「僕らとリクルートさんは、大きい会社の新規事業というところが一緒。ステークホルダーも多いため、いろいろな判断が必要ですが、個人的には手がける人と領域さえ間違っていなければ事業は成功すると思っています。藤田が桑野を動画領域にアサインしたように。右往左往しながらも、成功させる。最初からうまくいく事業はないので、諦めないことが大切。」と背中を押してくれました。これに桑野氏も同意。僕から付け加えることはありませんと述べました。

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質疑応答

そのまま講演を受けての質問タイムへ。講演で参考になるお話が多かったこともあり、制限数を超えるほど手が挙がりました。
なかでも印象的だったものが、社長の大切な仕事とは?という質問。

飯塚氏「社長とは、こうあるべきという論じ方は好きじゃないけれど、キメをつくるのは大切。いまは採用にいちばん時間をかけています。」
桑野氏「できるかぎり目立たない。自分がいちばんイヤだと感じるのは、なんでも首を突っ込む社長。得意じゃないことにも、社長だからと出しゃばるようなことはしたくない。社長だからという気負いは失敗につながると思っています。」

もうひとつが、自分で起業するという選択肢はなかったのか?

飯塚氏「迷いはありました。でも、学生のときに働かせてもらった会社が思うように伸びていなかったり、エンジニアでもない自分が業界に突っ込んで成功するイメージがなかったり。だったら新卒で入って、いまからでも経営陣を目指せるサイバーエージェントのほうが魅力に思えました。」

桑野氏「ゼロからイチをつくるより、1を10に磨いていくほうが好きな、社内でも珍しいタイプ。事業をどれだけ大きくするかに興味があるので、自分でベンチャーをやろうとは思いませんでした。」

質疑応答でも、示唆的なお話を多く聞くことができました。
そのあと、各社の事業についてプレゼンがあったのち、懇親会へ。今後のコラボレーションを予感させる盛んな交流が行われました。

編集後記

おふたりの発言で多く聞かれたのは「社長次第」という言葉。たとえば、明確な撤退基準はあっても、最終的な判断は事業を担う社長を見て判断されるということや、事業内容はさておき、社長と領域がマッチングしていれば最終的には上手くいくということなど。それは裏返せば、どれだけ恵まれた環境、素晴らしい制度があっても、それだけでは意味を成さないということ。リクルートには新規事業を加速化する仕組みはあっても、それを享受するだけでは何も生まれないということ。チャレンジに自分なりの必然性を見出し、愚直にやりきる人だけが事業をスケールさせられるということかもしれません。この日、参加者の心に灯された火が、今後どのように燃え上がっていくかに期待しています。
MTLweb編集部