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「ローカルと大企業のシビックテックリクルートの事例」CIVIC TECH FORUM 2016

2016/04/24

シビックテックとは、テクノロジーのちからを得た「市民の手」で、社会・地域を改善していく取り組み。公共サービスだけでは解決できない社会や地域の課題に対してどう取り組んできたかの事例や問題提議を行う「CIVIC TECH FORUM 2016 ~ローカル、ビジネス&テクノロジー~」が、3月27日(日)に東京・田町の建築会館で開催されました。

ローカル課題に対し、大企業はシビックテックを通してどのように関わっていけばよいのか。
「ローカルと大企業のシビックテック リクルートの事例」と題して、Media Technology Lab. 室長/株式会社ニジボックス 代表取締役社長 兼 CEO/ TECH LAB PAAK 所長の麻生要一氏が講演しました。

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リクルートがどのように地域課題に向き合ってきたのか。2015年度の1年間でやってきたシビックテックの取り組みをいくつか紹介しながら、今日この場で共創や創発が生まれればうれしいと前置きし、講演をスタートさせました。

リクルートはこれまで「人生の大切な選択・意思決定の場において価値のある情報」を届けるために、200超のメディアブランドを世に生み出してきました。この国の社会課題をビジネスで解決することを本気で思考している会社でもあります。

ただ昨今ではイノベーションのスピードが日に日に加速しています。リクルートの展開するビジネスと関連しない事業やサービスだとしても、社会課題を解決している社外の良い取り組みがあれば、リクルートのアセットやナレッジを活かして応援しています。

1.ITで社会課題を解決する人や取り組みを応援する
2.
自らのビジネスで社会課題を解決する

国が地方創生に力を入れていることもあり、日本の課題のトレンドの一つは地域課題と言えるのではないでしょうか。私たちは1年前の「CIVIC TECH FORUM」で2015年をシビックテック元年にしたいと宣言し、さまざまな地域課題を解決する取り組みを行ってきました。その結果、シビックテックに関する多くの事例が生まれ、共有されています。
今日はその事例と成果をいくつか紹介したいと思います。

リクルートが10年来やっている日本最大級のハッカソン「Mashup Awards 11(MA11)」では、シビックテック元年という宣言通り、Code for Japanとシビックテック部門賞を設け、大きく盛り上げてきました。優秀賞は「千葉市お祭りデータセンター」。市民の手によってお祭りの情報が入力され、検索できる作品が選出されました。

「テクノロジーで世の中をもっとよくする」取組を応援する場作りとして、ちょうど1年前にオープンしたのが「TECH LAB PAAK」。この世界をもっとよくするイノベーションが生まれるスペースにするんだという想いから、渋谷にオープンしたクローズドなコワーキングスペースです。

リクルートが応援したい活動をサポートしているのですが、その内容は半年間場所とアセットを無料で使い放題です。3カ月ごとに40組100人を募集しているので、1年で160組400人くらいの活動をサポートしています。

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その中から、TECH LAB PAAK発のいくつか象徴的な事例を紹介したいと思います。

まず、「deploygate」はミクシィから生まれたAndroidアプリ開発者向けサービスで、簡単にプロトタイプが共有できるツールです。

abaが開発する「Lifilm」では、排泄シートで介護状態の人の排泄物を匂いで感知して知らせてくれるIoTデバイスを開発しています。

撮りためている子供の遊んでいる動画のハイライトのいいシーンを切り取ってつないで自動編集してくれる「filme」。

Twitterのハッシュタグでつぶやくと、その場でプリントしてくれる「#SnSnap」。

入院していて外に出られない病院内の子供たちに、魔法が使えるような感覚を伝えるプロジェクトマッピング「Digital Hospital Art」。

先ほど登壇されていたCoaidoの玄正慎氏は、MA9のハッカソンで心停止者救命支援アプリを開発して優勝し、PAAKの第一期の会員でもあります。

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そして、リクルート自身もシビックテックに事業参入し、自らが地域課題に対してどう向き合うべきかを模索してきた1年でした。
Smart City Innovation Program」という地域活性のプロジェクトでは、千葉県柏市柏の葉の「柏の葉スマートシティ」を舞台に、三井不動産グループとともに画期的なチャレンジを行いました。リクルートの新規事業創出プログラムをオープンイノベーションで実施したのは初めての事例です。

柏の葉の街全体を実証実験の舞台として提供してもらい、地域活性のビジネスアイデアをリクルートの社員国内1万人に募集し、市民と一緒に議論します。リクルートの事業リーダー、行政、市民、不動産のディベロッパーが混ざりあって議論するのは、これまで会議室や研究所でクローズドで行ってきた大企業の新規事業開発の手法としては画期的だったと思います。

会社の事業として成立するかもわからず、アイデア段階から市民と議論してブラッシュアップし、コンフィデンシャルな課題も乗り越えた最初の事例だと思います。

塩尻市と連携し、リクルートとソフトバンクで地域課題に対して政策提案を行うプロジェクトにも取り組みました。塩尻市の地域課題5つに対して、市でフィールドワークをし、市長に直接プレゼンを行って、3つのプロジェクトが動くことになった事例です。

仕事と育児の両立を支援するプロジェクト「iction!(イクション)はオープンイノベーションで課題を解決するためのフォーラムを開催しました。また、育児の課題解決に取り組む中でいくつかのサービスも生まれています。

kidsly」は、「登降園管理」機能や子供の様子を伝える「連絡帳」や「フォト」機能で保育士さんの業務を効率化し、保育園と保護者のコミュニケーションを深めるサービスです。

妊娠・出産から職場復帰まで応援する「カムバ!」は、妊娠から出産、復職までどんなスケジュールでどう動けばいいかを教えてくれるアプリです。

家事支援サービス「casial.」はお掃除に特化することで、低価格で育児と仕事の両立を図るお母さんを支援するものです。

ほかに地域課題に取り組んだ事例としては、地域の移動をテクノロジーで支援する「あいあい自動車」があります。三重県菰野町で実証実験を行ったもので、ご高齢者を近所の手が空いている人が、近距離でも病院などに乗せていってくれる仕組みを作ったカーシェアリングサービスです。

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こうして1年間地域課題に取り組む中で、いくつかの課題が見えてきました。地域課題解決のためのシビックテックとして、3つ感じていることがあります。

1.地域を主体に

2.TechSimpleに運用込みの設計で

3.事例を積み上げる

地域課題に対して、ついつい自分たち主導で行ってしまいがちなのですが、地域の人たちを主役にして地域の熱量をあげないと問題は解決できません。

また、高度なテクノロジーやかっこいいUI/UXは地域では理解されづらいといえます。タブレットが使えない、ボタンの位置がわからないというケースもよくあります。どれだけ高いテクロノジーであっても、それをいかにシンプルに使えるように設計できるか、は重要です。

どれだけシンプルにしても伝わらないこともあります。その場合は使いやすいかよりも、教える人の存在が重要になってきます。どうやって教えることをフロー化するかも大事です。

さらに、地域は変化を東京ほど好まない傾向があります。先進的な取り組みをしている地域もあるので、事例を作ることで理解してもらい、根気よく伝えていくことも必要となります。

このように2015年はシビックテック元年の名にふさわしく、数多くのイノベーションを生み出してきました。2016年も地域課題を解決することで、この世界をよくしていきたいと考えているので、本年も一緒に取り組んでいきましょう。そう麻生氏は締めくくり、講演は終了となりました。

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