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ビジネスで地方の課題を解決するヒントとは? RECRUIT VENTURES × 地方創生 トークイベント開催

2016/11/09

リクルートはこれまで、日本中の生活者の“不”を解決することで、新しい事業や産業をつくり出してきました。これを多くの課題を抱えている地方にも提供していきたいという想いで発足されたのが、RECRUIT VENTURES×地方創生プロジェクトです。

私たちは地方の生活者が抱えるさまざまな“不”の中でも、特に農業や林業、漁業などの一次産業の課題解決や、後継者不足の問題、移住定住の促進など、これまで取り組んでこなかった問題に取り組み、地域の活性化を進めていこうと動き始めています。

8月29日に開催された、RECRUIT VENTURES×地方創生キックオフイベントで、高知県との包括連携協定を締結という全面協力を得て、ビジネスモデルの実証実験の場を用意。地方創生ビジネスのスタートアップのためのチャンスは十分です。

今回は、リクルートホールディングス経営コンピタンス研究所から、モデレーターとして岩下 直司が登場。このイベントが、リクルートの得意とするビジネスの視点だけでなく、新たな視点や考えを養うための機会になればとの想いを語ります。

そして、いよいよ「地方創生ビジネス」に精通したスペシャリストの方々をお招きし、ご自身の体験を踏まえた貴重な講演がスタート。今後のRECRUIT VENTURESへのエントリーを促す、貴重なトークイベントの内容をお伝えします。

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  • ご登壇者

『地域に眠る遊休資産を活かした価値創造とは』
藤川 佳則氏(一橋大学大学院国際企業戦略研究科 准教授)

『世界のITベンチャーが手がける先進的な事業事例とその可能性』
澤山 陽平氏(500 Startups Japan マネージングパートナー)

『羽田発、漁業×物流イノベーションによる地方創生』
野本 良平氏(CSN地方創生ネットワーク株式会社「羽田市場」)

『RECRUIT VENTURESより生まれた新規事業「あいあい自動車」の開発秘話』
金澤 一行(Media Technology Lab.「あいあい自動車」プロジェクトオーナー)

 

最初にご登壇いただいたのは、一橋大学大学院の国際企業戦略研究科で教鞭をとられている藤川 佳則氏。

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世界の情勢の統計データをグラフにして可視化できる「Gapminder」を見せながら、少子高齢化問題はここ最近の日本で突発的に起きたものではなく世界中で起きている問題で、その兆候は100年前から見られていたことを解説。地方の課題を個人の小さな視点として捉えるのではなく、地球規模のマクロの視点で捉える考え方を教えてくださいました。

次に、モノを売っていた企業がサービスを提供する。サービスを売っていた企業がモノを売るようになる。というように、事業の垣根がなくなってきていることについて解説。例としてGoogleの『Google Glass』や、adidasの『Smart Ball』を紹介し、1つの商品が生み出す価値が必ずしも1つではなくなってきていると話します。

そして、一昨年ベストセラーになった本『GLOBAL TILT』の著者は、“世界経済の中心は北緯31度から南側に変化していっている”と考えていることを紹介。“世界の名だたる企業は未だに北緯31度より上に拠点を置き、それより下の地域のことを見ていないが大丈夫なのか?”と警鐘を鳴らしている、とお話してくださいました。

最後に、『TABLE FOR TWO』や『Life Straw』の取り組みを紹介し、世界中で価値の共創をする相手を多くもつことでビジネスの領域を広げている企業について解説。「みなさんはどのような価値づくりの世界観を持って、地方創生ビジネスのアイデアを膨らませていくのでしょうか?」と参加者に問います。

その答えとして藤川氏は、私たちが日常で当たり前のようにとっている行動や当たり前のようにもっている資源を組み合わせて、新しい価値を生み出していくところに「地方創生ビジネス」の可能性があるのではないかと語りました。

 

続いてご登壇いただいたのは、世界50か国1500社以上に出資するベンチャーキャピタル500 Startupsの日本支社でマネージングパートナーを務める澤山 陽平氏。

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500 Startups Japanでは、出資先企業に資金を提供するだけでなく、アクセラレーターとして、4か月間で企業を鍛え上げています。具体的には、資金調達の方法やマーケティング、プレゼンテーションに至るまで、企業を実際に育てる活動をされています。また、スタートアップの際には必ず“Why this?”、“Why now?”、“Why you?”という考えで投資先を選ぶのだそうです。

その上で、ベンチャー企業は出資するだけでは大きくならない、アクセラレーターといった活動や永続的に支援をしていくことが大切だと語ります。

また、第一次産業で新しいサービスを生み出していく場合、シンプルに考えることが大事だと言います。課題は、たったの3つ。生産物自体のこと、生産物をつくる時のオペレーション、生産物をつくった後の流通。後は、それにどんな新しいテクノロジーを組み合わせていくか、と言います。

その1つの成功事例として、インドネシアのベンチャー企業iGrowを紹介。iGrowとは、農家と投資家と地主を新しいシステムでつないでいる企業です。仕組み自体は昔からあったものですが、それを新しいネットワークでつなぎ、三者すべての課題を解決しているのだそう。その他にも、いくつかの企業事例を挙げてくださいましたが、それらすべての企業は、課題を見つけ、そこに新しいサービスとつなぎ合わせることで成り立っているものでした。

それを踏まえ、一次産業の事業はどうしても結果が出るまで時間がかかるもの。3年、あるいは4年と長い目で成長を見届けることが大切だとお話してくださいました。

 

三番目のご登壇者は、羽田空港の中に拠点を持つことで、新鮮な魚を早く消費者の元へ届ける羽田市場の野本 良平氏。

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日本は世界一と言っていいほどの豊かな漁場を持ちながら、漁業は右肩下がり。今現在、漁業が衰退傾向にあるのは世界中でこの国だけだそう。初期投資がかかる上に収入は不安定で、世帯収入が199万円以下の漁師も。以前は109万人いた漁師も、現在は16万人。10年後には0になる見通しだそうです。

そんな日本の漁業衰退の原因には、資源管理の問題と流通の問題があると語る野本氏。

その1つである流通の問題から改革しようとしているのが、羽田市場です。今までの流通は、魚が漁師から消費者へ届くまでにいくつもの業者を経由することで、その都度手数料や経費がかかり、鮮度も落ちていってしまっていました。

そこで羽田市場では、漁場から最寄りの空港までトラックで運び、飛行機で羽田まで空輸するというシステムを構築。こうして、安くて新鮮な魚を消費者に届けるサービスが実現したと野本氏は語ります。また、通常は年末年始の市場は休みですが、漁師にお願いして年末年始も漁に出てもらい、その魚を高値で買うというシステムも生み出します。それによって、消費者は食べたい時に新鮮な魚が食べられるようになってきているのだそうです。

また、大きさが基準に満たないなどといった理由で未利用魚とされている魚の活用も、大きなビジネスになると語ります。実際に羽田市場では、今までは廃棄されていた安価のおいしい未利用魚を漁師から請け負い、消費者や店が求める、価値のある商品として世に送り出してきたそう。「地方創生ビジネス」には、産地と消費者をつなぐちょっとしたアイデアこそが重要なのだとお話しいただきました。

最後に、日本は漁場に恵まれた国。漁業が活性化すれば一次産業全体の活性化になると「地方創生ビジネス」へ向けた熱い思いを語ってくださいました。

 

最後のご登壇者は、RECRUIT VENTURESのエントリーを経て「あいあい自動車」を立ち上げた金澤 一行です。

最初に、Media Technology Lab.室長の麻生が「あいあい自動車」の開発秘話を聞く上で大事な3つのポイントを紹介しました。

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1点目は、リクルートが前に出ておらず、地域が主体になって事業を動かしていること。2点目は、法律の壁に真正面から向き合い、クリアしていること。3点目は、諦めずにやりきったこと。エントリーして8回落ち続けてもチャレンジし続けたことが成功につながったと語り、金澤氏にバトンタッチしました。

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「あいあい自動車」は、“経済的負担の少ないDoor to Doorの運送”という考えでサービスを行っていると、金澤は話し始めます。「あいあい自動車」の具体的なサービス内容は、運転できる方と移動に困っている高齢者をタブレットでマッチングするというもの。地域の中でビジネスを成功させるために一番大切なのは、地域の中で、事業に共感して、サービスを実際に運営する団体とタッグを組むことだと言います。事業発足当時、最初に組んだのはその地域の社会福祉法人だったそう。その他にも、NPO法人やボランティア団体、変わったところで言うとお寺など、地域のことをわかっていて運営する能力のある団体を選ぶことが重要だと言います。

また、高齢者のご家族も大切にすることを忘れず、高齢になった両親に「あいあい自動車」のチケットをプレゼントできるというサービスも。使わずに余った分のチケットは運営団体の収益になるので、両者にマネタイズをもたらすというエコシステムが構築されたと語ります。

そして、自身の経験を踏まえ、事業構想に必要なことは2つあると言います。
1つ目は、カスタマーの深いインサイトを得ること。
2つ目は、それを俯瞰して社会的な目で見ること。

また、金澤は最後に“課題はニーズ”だと語ります。本当にその地域の課題を解決するものであれば、地域の方は積極的に協力してくれると、次回のエントリー者への応援の思いを込めて講演を締めくくりました。

それぞれの貴重な講演が終わったところで、どこかから聞きつけ急遽今回のイベントに参加されたという島根県庁、松江市役所の職員が紹介され、ひと言いただくことに。「これは、本来なら行政がやらなければいけないこと。でも、私たちのやり方では解決できず、リクルートさんのような企業となら解決できるのではないかと思っています。一緒に何かできることがあれば、やってみたい」とのうれしいお言葉をいただきました。

 

これを受けて進行を務める地方創生プロジェクトリーダーの花形は、こんな風に熱意を持っていらっしゃるお役所の方がいるので、連携して「地方創生ビジネス」に取り組み、地域活性化を進めていきたいと語りました。

こうして、次回のエントリーへの熱が冷めやらぬ中、RECRUIT VENTURES×地方創生のトークイベントが幕を閉じました。

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