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ロボット、アロマ、夢の盆栽。それぞれのハードウェアの愛しかた -OPEN PAAK DAY#3 トークセッションレポート

2016/05/02

3月28日、TECH LAB PAAK(以下、PAAK)会員 卒業成果発表会『OPEN PAAK DAY#3』が開催されました。第1期生、第2期生に次いで3回目の開催となる今回も、トークセッションと成果発表の2部構成で行われました。

本レポートでは、プログラム前半に開催されたトークセッションをお届けします。テーマは『Hardware Startupに取り組む意義と、その未来』。第5期からハードウェアスタートアップ会員枠が設定されたことを受けてのセッションです。モデレーターは、リクルートR&D本部Media Technology Lab.でハードウェアスタートアップと工場や職人をマッチングするサービス『BRAIN PORTAL』のプロダクトオーナーを務める笠井一貴氏。笠井氏自身が話を聞いてみたかったという豪華なゲストをお迎えしました。

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左より
モデレーター
BRAIN PORTAL』プロダクトオーナー 笠井一貴氏
登壇者
Pepper』:ソフトバンクロボティクス株式会社 縄田昇司氏
AROMASTIC』:ソニー株式会社 藤田修二氏
Air Bonsai』:星人プロジェクト 星ヒカル氏

まずは、登壇者から手掛けるプロダクトを紹介していただきました。

縄田昇司氏 ソフトバンクロボティクス株式会社 コンシューマーデベロッパーグループ:
わたしは、コンシューマー向けのPepper商品の企画や、アプリをつくってくれているデベロッパーのサポートをしています。

PepperはITの知識があまりない方でも、アプリやゲーム、会話を楽しめ、さらにその先の知能や感情をつくっていけるロボットプラットフォームです。

日本は漫画などでもロボットが身近ですが、マーケットとしてはようやく盛り上がってきたところ。Pepperは、全長が120㎝ありますのでスタートアップが扱うものとしては非常に大きく、ロジスティックやアフターサービスに負荷がかかるという難しさがありますが、1家に1台、ロボットを提供することで明るい未来を創造するために、日々取り組んでいます。

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藤田修二氏 ソニー株式会社 AROMASTIC プロジェクトリーダー:
AROMASTICは香りのエンターテイメント。というのは、既存事業であるエンターテイメント(映像、音楽)をどうやったら拡張できるかという試みの一環で、嗅覚に着目しました。

アロマという完成されたコンテンツの利用方法をひろげられないかという模索の末、いつでも、どこでも香りを楽しめるポータビリティを兼ね備え、香りを切り替えることができ、個人でも楽しめるプロダクトが完成しました。これは、かつてウォークマンで実現したことと同じで、新しい文化を創造できたと思っています。

とはいえ、香りを切り替えるといっても理解してもらえないと思います。だからこそ、そこに新習慣のポテンシャルがあります。伝わらないのはそういったデバイスが今までなかったかららだと思っているので、このハードウェアを通して新しい習慣を根付かせたいです。

星ヒカル氏 星人プロジェクト:
僕たち星人プロジェクトは、『星ごと』という、星を輝かせよう運動をしています。私たちが手掛ける『Air BONSAI』もその一環です。盆栽は星(地球)の象徴で、ケアを通して、あなたの手で星を輝かせませんかというプロジェクトです。

キックスターターで資金を得て、いま生産段階。九州の有田焼で器をつくっていますが、工業品と天然製品を融合させたことで難易度が高くなりました。

それぞれのハードウェアスタートアップの現状

笠井氏:
では星さんから、プロダクトの状況など聞かせてもらえますか?

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星氏:
最初はビジュアルベースのものを12個ほどつくり、キックスターターで大きな反響をいただくことができました。
世界66カ国、3000の人に支援していただき、80万ドルほどの資金調達に成功しました。まさに今プロダクトの制作中です。8月末と10月末にプロダクトを届けないといけない状態です。
キックスターターで資金援助を受けたプロダクトが最終的に納品できないケースも多いと聞いていたので、10社ほどの企業にお世話になり、入念に進めていたのですが、工業のハードルが想像よりも高く、量産に手こずっています。

笠井氏:
こういうものづくりはみなさん初めてなんですか?

星氏:
チームにはアーティストがいて造形は得意です。でも、量産を前提にしたメーカーのプロは入っていないので、このトークセッションで学びを得たいと思っています。

笠井氏:
そうだったんですね。
では、ハードウェアを制作していく過程で想定していなかった課題はありますか?

星氏:
66ヵ国に届けるにあたり、電気による問題に今ぶち当たっています。
例えば、2㎝浮くという話でお伝えしていたけれど、国によっては実現が難しく、担保できないケースが出てきそうなんです。
ソニーさんはいろんな国へ展開していると思うので、知見など分けていただきたいです。あとは、最終製品として、どこで出せるかの基準がわからず、なにをもってテストするかの知見が不足していることも課題と感じています。

笠井氏:
たしかに、大手メーカーのノウハウはぜひ教えて欲しいですね。
AROMASTICは今どんな状況でしょうか?

藤田氏:
まずは国内展開と考えています。将来的には海外も視野に入れていますが、レギュレーションの課題があります。リチウム電池ひとつとってもクリアしないといけない品質保証試験が違う。素材によって相性が異なるなど、ハードウェアならではの問題が多く、とっつきにくくしている要因なのかな、と思います。

ソニーという母体はあっても、すべての商流を網羅している人はいないんです。電気系の中にも回路を書く人など専門性がかなり細分化され、それぞれのエキスパートが必要になってきます。それが難しい。さらに品質保証という観点でいうと、部品という視点ではなく、統合的にユーザーにとっての品質をはかる視点が必要です。

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AROMASTICはマイコンを入れていないほどシンプルな設計だけど、それでもクリアしないといけないことが多く、ハードウェアのむずかしさを感じています。

また、ゼロからイチを生むことや、1から100の量産はできても、100から10000の壁があります。そこにパートナー選びの難しさ、納期の問題、コストの問題が出てきます。
さらに、クラウドファウンティングすると、実現(出荷)のお約束をしている状態になるので、それを逆手にとられ、工場などから強気で出られてしまうこともあります。こういうことがあるんだって、今回初めて知りました。

笠井氏:
スタートアップは資金調達の手段として、クラウドファウンディングを用いることもあると思うのですが、ソニーさんがクラウドファウンディングを使う狙いってどこにあるんでしょうか?

藤田氏:
わたしたちがクラウドファウンディングを使うのは、ニーズの確認の意味合いが強いです。

『買いたい』と『買う』は似ているようで間に大きな溝があり、クラウドファウンディングを使うとそれが可視化できます。また、クラウドファウンディングを使うことで、プロダクト購入者とつながることができるのも理由の一つですね。

また自社のクラウドファウンディング、FirstFlightはECサイトも兼ねているので、AROMASTICにおいては、香りのカートリッジ販売の良いプラットフォームだとも思っています。

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笠井氏:
なるほど、マーケティングツールとしての活用に加え、その後の販売機能まで組み込まれてるんですね。

では最後に、直田さん、Pepperくんは既に出荷されているので、今後のビジネス展開などについて、お聞かせ願えますか?

縄田氏:
ハードウェアと形がないモノとの違いは、UXと価値提供の探し方や置き方だと思っています。

アプリにおけるUXは、画面の中をどうつくるかという形かと思いますが、ハードウェアとなると、人の生活など実生活の中に置くことになるので、ユーザー動線の考え方などが難しいと感じています。想定とは違う置き方をされるケースもあります。
トライ&エラーの中で、仕様を変えざるを得ないこともあり、その変更にものすごいコストがかかることも。新しいものをつくろうとすればするほど、体系化されていない部分が多いのもハードウェアのむずかしさかもしれません。

価値でいうと、我々が考えなきゃいけないのはいま紹介があったAir BonsaiやAROMASTICのような、価値をうまく説明できないようなもの。
それを実際に触ってもらいながら、生活の中での新しい瞬間を切り出し、そのニーズを埋めるような形でビジネスを生み出していかなければいけない。ですが、そこを発見したり、仮説を立てたりするのは難しいと感じています。

笠井氏:
ハードウェアスタートアップはモノがある難しさに加え、アイデアひとつ、モノづくりの経験がない人が勝負をかけている難しさがありますよね。
次の質問に移りたいと思います。

今後、ハードの未来はどうなる?
ハードウェアスタートアップがハードウェアの未来に望むもの。

星氏:
環境は整ってきていると思います。3Dプリンターがあったり、発注ロットが少なくなってきたり、PAAKのような場所でネットワークを構築できたり。ハードウェアに限らず、大企業がスタートアップに投資するケースも増えています。

ただ、実際にやってみると、“モノ”を店頭に卸すことは難しく、そのためのコンサルテーションや知見をスタートアップは持っていない。場所とか、お金とかじゃなく、大企業とスタートアップがもっと密になり、新しい思いが形になって世に届くといいですね。コミュニケーションが円滑になる環境づくりはこれから。僕らも助けて欲しいなと思います。

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笠井氏:
大手さんからみると、スタートアップとコラボレーションするような動きはあるのでしょうか?

藤田氏:
ソニーとしては、スタートアップとコラボレーションするようなオープンイノベーションは数年前から期待しています。もっと外にもアイデアを広げていきたい。

たとえば、ひとつの金型を作るにも、ノウハウを活かしきれていない人がいらっしゃる。場所やお金じゃないという話は私も実感しているところで、そういったノウハウリソースを、アイデアやコンセプトに結びつけられたら面白いと思っています。

笠井氏:
ソフトバンクロボティクスさんも同じ動きはあるのでしょうか?

縄田氏:
Pepperはプラットフォーム商材なので、コンテンツプロバイダーなどとコラボレーションしながら、一緒に時代や世の中をつくっていけたらと思っています。

アプリ開発は小さな企業様も参画してくださっており、まだまだ活躍の余地があると感じたので、そちらも推し進めていきたいと思っています。

笠井氏:
ハードウェアは、モノならではのむずかしさがいたるところにありますが、これからどんどんコラボレーションなどを通じてもっと盛り上げていきたいですね。

スタートアップと工場などをマッチングするサービスを展開しているBRAIN PORTALも事業を通じて貢献し、世の中により良いプロダクトを届けたいと思っています。
ぜひハードウェアにチャレンジしてみてください!

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残念ながら、ここでトークセッションはタイムアウトに。

そして最後に藤田氏から嬉しいご提案が。なんとPepperくんを1年間、PAAKに出向させてくださるとのこと。とっても賢いPepperくんに会いにきてください。

それではレポート前編はこのへんで。後編の卒業成果発表会レポートもあわせてご覧ください。

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