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シリコンバレーのエコシステムのリアルってどんな感じ? -OPEN PAAK DAY#5レポート

2016/10/17

9月27日に、TECH LAB PAAK(以下、PAAK)会員 卒業成果発表会 『OPEN PAAK DAY#5』が開催されました。第5期生の会員が卒業となるこの日のイベントでは、これまで同様にトークセッションと成果発表、そして講評&表彰の3部構成で行われました。

今回はイベントレポート前編として、成果発表会の前に行われたトークセッションの模様をお届けします!

セッションのテーマに選ばれたのは「Silicon Valleyのエコシステムのリアル」。実際にシリコンバレーで活躍する3名にご登壇いただき、貴重なお話をしていただきました。

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左より
登壇者
『トーマツベンチャーサポート(株) シリコンバレー事務所』代表 木村将之氏
『500 Startups Japan』マネージングパートナー 澤山陽平氏
『ニフティ(株) 東京カルチャーカルチャー』河原あず氏

まずはご登壇者の方々に、それぞれの自己紹介をしていただきました。今回モデレーターを務めていただいたのは、パネリストのひとりでもある河原あず氏です。

澤山陽平氏 500 Startups Japan マネージングパートナー:
500 Startups Japanは、世界で最もアクティブなシードベンチャーキャピタルです。
昨年の9月に設立し、60カ国以上、1600社以上に投資をしてきています。世界中で投資をしつつ、エコシステムを作っています。

 

木村将之氏 トーマツベンチャーサポート(株) シリコンバレー事務所代表:

トーマツベンチャーサポートは、パートナーと2010年から始めて世界で約3000社のスタートアップをサポートしてきています。大企業とのオープンイノベーションというテーマで、新規事業を作ったり、スタートアップ自身の事業拡大や、資金調達の支援などを行っています。

シリコンバレーで行っていることはふたつ。
ひとつは、シリコンバレーのスタートアップと日本の大企業のオープンイノベーションを行っています。
もうひとつは、日本からシリコンバレーへ進出するスタートアップの支援です。
あとは「SUKIYAKI」というコミュニティを河原さんと運営しています。これはエコシステムをテーマに、日本とシリコンバレーのエコシステムを結びつける取組を行っています。

 

河原あず氏 ニフティ(株) 東京カルチャーカルチャー:
モデラー兼パネリストとして登壇させていただいています。
2013年の8月から2016年の8月まで、ニフティからの駐在員としてサンフランシスコに赴任していました。

様々なイベントコミュニティの起ち上げを行っていたのですが、その中のひとつが先ほど木村さんからお話が出た「SUKIYAKI」というコミュニティです。これは私自身も企業から派遣された事業開発をしている中で、課題だと思っていた部分を一緒に解消していくことを目的に起ち上げました。

ほかにも、伊藤園さんと「茶ッカソン」というイベントの開催や、年に1回サンフランシスコで行われている「JPOP SUMMIT」というイベントにはテクノロジーパビリオンのプロデューサーという形で関わらさせていただきました。大企業や投資家、スタートアップの方々と新しい価値を生み出すために様々な活動をしています。

シリコンバレーマップと実際の違和感

河原氏:
(シリコンバレーマップを写しだして)このマップを見たことがある人はどれぐらいいますか? これは俗にシリコンバレーマップと呼ばれているものです。現地のいろんな企業にも貼ってあることが多いのですが、実際にシリコンバレーに行ったことがある身から見て、この地図をどう思いますか?

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河原氏:
このマップは、実はお金を払うと載せてもらえるものなんです。載っている企業がえらいというわけではありません。この地図は日本の企業でもサンヨーがあったり、少し古いですね。

木村氏:
住んでいる身からすると、だいぶ違和感がありますね。サンフランシスコにはツイッターがありますしね。

河原氏:
一番南のエリアにサンノゼという町があって、そこが元々のシリコンバレーの発祥の地です。その後、スタートアップが徐々に北上していくという現象が、この数年で起きています。最初はスタンフォード大学のあるパロアルト周辺にスタートアップが増えてきて、この4~5年に一番北のサンフランシスコにたどり着きました。ほとんどのソフトウェア系のスタートアップは、サンフランシスコで起業しているイメージです。

日本の方が資金調達はしやすい?

河原氏:
木村さんがシリコンバレーに渡った経緯を教えていただけますか?

木村氏:
はじめてシリコンバレーと関わりを持ったのは、2012年ぐらいで、自分がサポートしている方達の中にシリコンバレーでチャレンジしたいという人が増えてきたのがきっかけです。

最初は出張ベースでサポートしていましたが、それだけではぜんぜんうまくいきませんでした。そこで、2014年にあらためてシリコンバレーに出て行きました。あと2012年ぐらいに、いきなりデラウェアで登記して、資金調達した方が上手くいきやすいといった論調が強まった時期がありましたね。

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河原氏:
最近はどうですか? 日本で調達した方が楽という話も聞きますが。

澤山氏:
資金調達の容易さといったら、圧倒的に日本でしょうね。バリエーションも多いと言われてます。

木村氏:
自分も同感です。日本で調達した方が、はじめの資金調達という意味ではやりやすいのかなと思います。

河原氏:
2012年あたりにシリコンバレーに入った企業はいまだに根付いて頑張っていますよね。

木村氏:
結構出入りも激しいです。そもそもシリコンバレーが多産多死型のエコシステムなので。

澤山氏:
500 Startupsの1号ファンドと2号ファンドから合計600社ぐらい投資しています。その中身を調査したところ、25パーセントがシリーズAまで行くことができました。その時点で75パーセントが死んでます。11パーセントぐらいはシリーズBまで行きます。
シリーズCは時価総額が数十億から百億ぐらいまで来ていますが、そのサイズに行くのが5パーセントほどです。

河原氏:
世間一般の平均値だと、成功率はもっと低くなりますか?

澤山氏:
シリーズAに上がるためのハードルが上がってきていますね。強豪の激しさも影響しているのかもしれません。

シリコンバレーでは人材が流動するエコシステムが出来ている

澤山氏:
エコシステムという話でいうと、死んでいった後どうなるのかというのが重要ですね。

澤山氏:
アクセラレーターに入ると3~4カ月同じ場所で過ごします。その間に仲良くなるので、どこかの会社が失敗すると別の会社に吸収されることが多いです。人材がその中で流動するような、セーフティネットのようなものが出来てきていますね。

木村氏:
アクセラレーターだけではなくて、投資家があるスタートアップがうまくいってないときに、ほかのスタートアップと合わせたら面白いんじゃないかと、合体させる事例もあります。
日本では、そうした事例はほとんど見たことがないので面白いと思いました。

河原氏:
そういう意味ではシリコンバレーの人たちは効率的なのかもしれませんね、感情だけで動かないというか。
個人投資家の数の違いも、日本のスタートアップエコシステムとシリコンバレーの比較でよく言われます。

木村氏:
シリコンバレーの年間の投資額が、4兆から5兆と言われています。日本は1000億から2000億です。その4兆から5兆の中の、半分ぐらいはエンジェルだといわれています。それがシードラウンドを支えています。

木村氏:
ストックオプションでも、株価が上がったときの時価総額が半端じゃないですからね。0.1パーセント持っているだけで、ミリオネアになったりという話も、結構あります。

 

ここからは、あらかじめ用意された質問に対してパネリストが答えていくというスタイルでトークセッションが進められていきました。

エコシステムの具体例:日本で似たようなことをやっているところは?

河原氏:
500 Startups Japanは、シリコンバレーの仕組みを日本に持ち込んだ一例かと思いますが、その辺はどうですか?

澤山氏:
そうですね。エコシステムを作るために、いろんな国でいろんなことをやっているのが特徴です。僕たちはベンチャーキャピタルですが、事業はふたつあって、投資とエコシステム構築なんです。

エコシステム構築では、教育プログラムとコミュニティやイベントを行っています。なかでも力を入れているのが教育で、エコシステムを作るにはいろんなプレイヤーが必要ですが、そのプレーヤーにも投資家教育やオープンイノベーションの教育、起業家教育の3つのプログラムを行っています。

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木村氏:
僕は、日本は逆に、すごく充実していると思います。大企業も積極的にスタートアップのサポートを行っていますし、VCも積極的にやっている印象がありますし、メディアもスタートアップに注目してくれます。サポートする側は整ってきているなという印象です。

エコシステムの具体例:シリコンバレーのエコシステムで自分が心がけていることは?

澤山氏:
僕の場合は「Pay It Forward」のひと言につきますね。「Give And Give」といったほうがわかりやすいかもしれません。

アクセラレーターというと、僕たちだけで支援しているように聞こえるかもしれませんが、実はかなりいろんなメンターが関わってくれています。数ヶ月の間にいろんな分野のメンターを呼んできて、そうした専門家がレクチャーをして直接支援してくれます。
そのメンターの人たちに、僕たちはお金を払っていません。
先ほどの「Pay It Forward」で、(メンターが)自分が今こうした立場にいられるのは駆け出しのころに応援してくれた人たちがいるおかげだと思ってくれているからだと思います。だから僕たちも今支援するんだという精神が脈々と続いています。

木村氏:
シリコンバレーは、紹介の文化なんです。紹介が入ると、どんどん拡がっていきますが、それが止まると流れも止まってしまいます。
だから、相手のために何ができるのかというのを、ひたすら意識しています。英語が全然出来ないときから、「What can I do for you?」とずっと言ってきました。

河原氏:
最初に「What can I do for you?」と言われたときに、なんて返していいのかわからなかったんですよ。日本人は遠慮がちなので、別にいいやとなりがちですが。
商談の相手の立場になった場合、こういうことをして欲しいと明確に答えられると、もっといいレスポンスやサポートが得られるようになります。「How Do You Do?」と「What can I do for you?」の組み合わせは、結構大事だなと3年間で学びましたね。ちなみに、「What can I do for you?」と言われたら、木村さんはどのように答えていますか?

木村氏:
相手によっても変えますが、「What can I do for you?」と言ってる時点で、お互いとしては何も無かったということなので(笑)。そこで、お互い何かできることはありませんか? と探している状態です。そういうときは、紹介になることが多いですね。

エコシステムの具体例:日本の良さは?

木村氏:
日本の良さはコミュニティが集まっていて、サポートする人が多いところです。そこをうまく使っていけるといいのではないかなと思います。

澤山氏:
最初の地図の話じゃ無いですが、日本はぎゅっと縮まっている感じがします。公共交通機関が発達していたり。

木村氏:
人と人も近いですね。向こうでは、コミュニティ同士も離れているので。それを考えると、スタートアップコミュニティー全体がぎゅっと集まっているのはすごくいいところだなと思います。

河原氏:
この質問で僕が言いたいのは、シリコンバレーに行ったことがある人に会った方がいいというところです。
僕たちは僕たちなりの観点で、シリコンバレーのリアルを語っていますが、それぞれの観点で経験で持っていたりネットワークを個々に持っていたりします。自分の耳や自分の肌でシリコンバレーにフィットするのかだとか、そうした判断が効くと思います。東京の良いところは、そうした人がたくさんいるところです。

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木村氏:
日本は生活コストの安さもありますね。向こうのように家賃に40万円も払うことはないので。でも、僕としては変わって欲しいのが、現状は日本のエンジニアのコストがすごく安いところです。だいたい向こうの半額ぐらいで済んでしまいます。もっとエンジニアの立場が向上するといいな、と。シリコンバレーの企業でエンジニアチームは日本で作っている企業もあるくらいです。

エコシステムの具体例:日本なりのエコシステムとは?

木村氏:
繰り返しになりますが、密集度が高くてサポートが強いのが日本の良いところです。
サポーティブな方も多いので、ひとりキーマンを捕まえると紹介してくれたりサポートしてくれる印象が強いです。

澤山氏:
気を付けなければいけないのは、日本人の性質かもしれませんが熱しやすく冷めやすいところです。
今回自分たちのファンドを作るのに資金調達をしました。そこでいろんな企業と話をしているときに、「昔やったけど失敗したからもうやらない」と言われたことがあります。
この5年間で盛り上がりを見せていますが、そこで、3年やったからやめようというような話になると、すごく怖いです。

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93パーセントのベンチャーはほとんど失敗しますがそれがわかるのに、5年間は掛かります。そうしたリスクが分かった上で、ベンチャーに関わり続ける。そうしたマインドセットみたいなものを、作っていかなければいけないのかなという気がしています。
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残念ながら時間ということで、ここでトークセッションは終了となりました。実際にシリコンバレーと日本の環境を熟知していらっしゃる3名にしかしかわからないような、貴重なお話をたくさん聞くことができました。

続けて、後編の卒業成果発表会レポートも公開予定ですので、お楽しみに。