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【PAAK対談】スポーツテックが持つ可能性とは
-リクルートホールディングスR&D本部 岡本彰彦氏 × SPOT 吉田拓真氏・佐々木耀氏-

2016/03/22

リクルートホールディングスが、社会課題の解決に挑むオープンイノベーションを推進する場として提供している『TECH LAB PAAK』(以下、PAAK)は、厳選なる審査をクリアした会員に、半年間に渡って自由に使えるスペースと設備、見聞と人脈を広げる機会を提供しています。

昨年末、2015年12月18日(金)の『OPEN PAAK DAY』では、第二期メンバーの卒業式が開催され、プログラムのひとつとして社内外から審査員を迎えた成果発表が行われました。

賞のひとつ『TECH LAB PAAK賞』に輝いたのが、吉田拓真氏と佐々木耀氏による『Spot』。スポーツのあり方を変えるという志のもと、経験則や感覚が主流のアマチュアスポーツのトレーニングシーンに、データロジックを浸透させるツールとしてリリースを目指します。試合を撮影し、選手のプレイを分析、データ化。その一方でハイライト動画を作成し、数値だけでは見えない選手の癖などを可視化し、トレーニングの質を向上させる機能を実装しているといいます。

 

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『Spot』を強く支持したリクルートホールディングス R&D本部 専門役員の岡本彰彦氏は、表彰の際に「次にくるムーブメントはスポーツテックだと思っています。ほかのスポーツへの展開も可能だし、こういったものがないと日本はオリンピックで勝てないと思う。今後の可能性という観点から選ばせていただきました」と語りました。

本対談は、表彰の副賞として企画された、RECRUIT R&D 岡本氏とSpotの吉田氏/佐々木氏の対談記事です。リクルートの10年後を見据える戦略を描く立場にある岡本氏と、スポーツ系スタートアップのSpotの対談から、スポーツテックの可能性に迫ります。

 

 

岡本氏 今日はお忙しいところ、ありがとうございます。

Spotチーム いえ、こちらこそありがとうございます。岡本さんは投資家という印象があり、緊張しています。

岡本氏 あははは。まあ、そう硬くならずに。確かにリクルートに入社する前は銀行、ベンチャーキャピタル、証券会社を渡り歩きましたが、学生時代はアメフトに夢中のスポーツ好き。それに、スタートアップも経験していますから、おふたりとの共通点は多いと思いますよ。よろしくお願いします。

Spotチーム そうでしたか、ほっとしました。あらためて、よろしくお願いします。『Spot』を支持してくださって、ありがとうございます。理由を伺えますか。

岡本氏 リクルートの10年後を創造するために、投資先を検討するのも私のミッションなんです。そういう観点で注目している分野のひとつに、スポーツテックがあります。スポーツが好きというのもありますが、純粋に大きな可能性を感じるんです。逆にいま注目されているフィンテックよりも、私個人としてはスポーツテックの方に魅力を感じています。というのも、銀行に身を置いていた16年前にも同じような動きがあり、わたし自身がインターネットと金融を融合した新規事業開発を担当していました。いま、テクノロジーが進化したことによって、あの当時は解決できなかった課題が解決できるようになってきていますが、それによって実現される世界は16年前に我々が目指していたものと何も変わっていない、その道筋が既に見えてしまっているので個人的には大きな驚きはないんです。

 

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Spotチーム なるほど。

岡本氏 それに比べてスポーツテックには、まだ見えない大きな可能性があると思っているんですが、あくまでも仮説。今日、おふたりの話を聞いて確信を強められたらと思っています。

Spotチーム それはプレッシャーです(笑)。では、あらためてサービスの説明からさせていただきます。『OPEN PAAK DAY』のピッチは、制限時間3分と短かったので。

岡本氏 確かに短かった(笑)

Spotチーム アプリを介すサービスで、いまはバスケに限定しています。ユーザーは自分で試合を撮影し、それをもとにデータ分析ができます。

岡本氏 なるほど。力を入れた点は?

Spotチーム 撮影しながら、誰でも簡単にデータを入力できる点です。こんな感じです。UIがコートになっていて、試合やトレーニングを目で追いながら、どんどん入力できます。

 

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岡本氏 本当だ、これはすごいですね。

Spotチーム バスケは展開が早いですよね。その先に起こりうるプレイの連続を簡単に入力できるようにしたことがポイントです。そして、相手チームのデータも入れることができます。

岡本氏 入力後は、データ形式でアウトプットできるんでしょうか?データに基づくトレーニングをサポートするだけでなく、たとえば選手が自分のプロモーションツールに展開できるといった機能は実装しているんですか?

Spotチーム その方向で進めていますが、現時点では選手のプレイを見ることができるという段階です。

岡本氏 現状は半年の成果、これから磨き上げのフェーズに入るというわけですね。アマチュアプレイヤーに限定していると聞きましたが、そこは変わらない予定ですか?

Spotチーム 個人だけでなく、チームも想定していますが、プロのコーチを雇えない状態でも、データに基づく論理的なトレーニングができるようにという点は変わらないと思っています。

岡本氏 とても良いと思うんですが、対象はほかにもあると思うんです。先ほど私もスタートアップ経験者だと話しましたが、具体的にはファンタジースポーツの事業を立ち上げた実績があります。ご存知かもしれませんが、試合に出た人の活躍度をレーティング化し、それをもとに仮想チームを編成できるゲームを提供するという事業です。

 

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Spotチーム ゲームですか、意外です。

岡本氏 そう、アメリカではメジャーなゲームなんです。試合のたびにプレイヤーの活躍度が反映され、最終的に誰がつくった仮想チームが強かったかで賞金がでるんです。これを日本でも展開したいと考えたのが発端でしたが、アメリカと違ってギャンブルを規制する法律に抵触する恐れがある。じゃあ、どうしようと考えた結果、カードゲームという仕立てにしたところ1年目から黒字化できました。カードをコレクションする楽しみや、強いチームを作って賞賛される喜びが、お金はあるけれど時間がない大人を惹きつけたんですね。

Spotチーム なるほど。

岡本氏 これに通じるものが『Spot』にもあると感じていて、可視化するデータを二次利用することでエンターテイメントや、チームのファンサービスという展開がありえると思うんです。ほかにもスケールの方法はいろいろあると思うので、マネタイズのポイントをどこに置くかを考えたほうがいいと思いますよ。

Spotチーム ありがとうございます。実は先日、尊敬している経営者と話す機会があり、広告でマネタイズするのがスムーズという助言をいただきました。もちろんその線は考えますが、個人的には他の手段も模索したいと考えていたので、勉強になります。

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岡本氏 対象とするスポーツを増やしてもいいですよね。アマチュアが最も多いバスケに狙いを定めたのは筋がいいけれど、スタートアップとしてサバイブしていくためにユーザー数を増やすような横展開を考えてもいいと思います。また、ユーザーを1チーム1チーム獲得していくのも効率的ではないので、潜在顧客となるユーザーが多く集まる場を押さえるのも重要ですよね。

Spotチーム なるほど。

岡本氏 そのようなアプローチ先を検討するうえでヒントになりそうなのが、スポーツイベントや大会に出向いて選手の写真を撮影するサービス。プロのカメラマンが撮影したクオリティの高い写真を、サービスを提供している会社のサイトから買うことができるんです。サイトを見てもらうと分かりますが、そのような会社はサッカー、バスケ、マラソンなど、さまざまなスポーツイベントにカメラマンを派遣しているんですね。見方によっては、その会社の営業先すべてが『Spot』にとっては見込み顧客といえるのではないでしょうか。

Spotチーム そうですね。そうだ、大会といえば、自分たちで大会を主催することも考えているんです。バスケのアマチュア大会を企画し、僕らが『Spot』で撮影し、データを提供することで価値を実感してもらう。

岡本氏 それもいいですね。地道なアプローチだけど、ふたりがやりたいことに近いかもしれない。バスケは上手くなりたいという人が多いスポーツだから、向上心に火をつければニーズはあると思います。

Spotチーム はい。やりたいこと、理想とすることから軸をブラさずにスケールするにはどうすればいいかが、今後の課題だと感じています。

岡本氏 そうですね。

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Spotチーム 参考にしたいのは、スターバックスの戦略です。あのお店でコーヒーを買う自分がかっこいいと感じる層がいるように、アマチュアのスポーツ選手が、ちゃんと自分のデータを見てトレーニングするのがかっこいい、ライフスタイルとして取り入れたいという世界観を目指したい。

岡本氏 それにはブランディングが必要ですよね。スターバックスはあの空間を、自宅でも、職場でもない、サードプレイスと定義したことは良く知られている話だけど、同じように提供価値を明確にブランディングする必要があるんじゃないでしょうか。マネタイズのポイントを明確にしていくと、ブランディングの焦点もあってくると思いますよ。

Spotチーム はい。ありがとうございます。

岡本氏 いつか、一緒にコラボレーションできるといいですね。

Spotチーム はい。

岡本氏 スポーツテックが次にくる大きなムーブメントだという期待と確信はあるけれど、いまマネタイズできている事業やサービスはプロを対象にしたものがほとんどだし、資金力ある大手が将来的なリターンを背景に先行投資している領域だと感じています。だからこそ、簡単じゃないけれど、そこに挑戦する意味があると思うんです。ふたりの純粋な思いを忘れないで、ぜひ頑張ってください。

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■Spot https://basketball.spot-sports.tokyo