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アフリカの驚きの現在がわかる!
RECRUIT VENTURES College with JICA開催

2016/09/08

7月8日、独立行政法人国際協力機構(JICA)の職員と株式会社リクルートホールディングスの社員が一堂に会する、ワークショップ「RECRUIT VENTURES College with JICA」が銀座・Media Technology Lab.(以下、MTL)Cafeで開催されました。

このRECRUIT VENTURES Collegeは、リクルートの新規事業開発プログラムであるRECRUIT VENTURESが主催する社内向けイベント。
今回はJICAとの共同開催という初めての試みで、当日はリクルートとJICAからそれぞれ2名ずつが登壇し、講義形式でお話しいただきました!

ひとり目の登壇者は、幸田泰尚氏(リクルート Media Technology Lab.プロデューサー)。

「RECRUIT VENTURESが推進するオープンイノベーションの取り組み」というテーマで、リクルートが取り組んでいるオープンイノベーションについて紹介しました。

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RECRUIT VENTURESは一昨年からベンチャーキャピタルがスタートアップへ投資するのと同じ仕組みである“ステージゲート方式”を取り入れ、ステージごとに各案件への投資額を上げていき、ステージを上げることに対して厳格な基準を独自に設けているのが特徴、と紹介しました。

例として、収支構造がきちんと設計できているか?ユーザーが伸びているか?など、適切に事業が育っていくのを確認しながら、あと半年、あと1年という形で追加投資と撤退の判断基準を設けています、と説明しました。

また、リクルートは積極的にオープンイノベーション戦略を取り入れています、と話す幸田氏。

自社だけでは足りないリソースを社外と協力しあうことで、より大きくイノベーションを生み出していくというものです。現在、株式会社サイバーエージェントと共同で新規事業を創出するプロジェクト“FUSION”を実施、近頃ではソニー株式会社とワークショップを行うなど、取組を強めていると紹介しました。

最後に、今回のJICAとのワークショップについては、JICAが取り組んでいる途上国の問題でボトルネックになっている部分を、一緒に解決しながらイノベーションが生まれる初めの一歩にしたい、と語りました。

ふたり目の登壇者は、金澤一行氏(2015年度リクルートベンチャーズ事業化案件「あいあい自動車」のプロジェクトオーナー)。

「新規事業開発におけるMVPの作り方。~必要最小限のニーズ検証メソッド~」というテーマでプレゼンテーションを行いました。

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この、「MVP」とはMinimum Viable Productの略称です。

最小限の労力と時間で構築・計測・学習のループが回せる「製品」のことを指しておりますが、必ずしも「製品」である必要はなく、本当にそのビジネスがビジネスとして回るかどうかを、検証するために使われる最小限のポイントを押さえたモデル、と話しました。

続いて、金澤氏が手掛ける「あいあい自動車」については、地域住民と共同所有の車を利用して、移動が難しい高齢者と、自動車の維持費に困っている地域住民の「不」を解決するサービス、と紹介しました。

地域で共同で費用負担して車を借り、車を運転できる人はその車を自由に使うことができる代わりに、専用のタブレットからの依頼に応じて、運転できない高齢者の送迎してもらいます。高齢者はタクシー料金の1/3ほどの料金で、このサービスを利用することができます。

本当にニーズがあるのかを検証できないまま、すべてを開発してしまうと、失敗してしまった時、大きな損失をすることになってしまいます。そのためあいあい自動車の仮説検証の段階では、タブレットの開発を行わず、コールセンターで代用、と金澤氏が取り入れたMVPについて話しました。

また、他人を乗せてお金を取る行為は、定められた法的な手続きなしに行うと違法行為になるため、この期間ではお金をとりませんでした。また、運転する側には個人所有の車は使用せず、運営側が用意した車1台を複数名で使用してもらったそうです。

その結果、小さなレベルでこの「仕組み」が回ることが確認できたとお話しいただきました。

最後に、MVPを回す上で、意識しなければならないのは「最も効果的な判断」ができているかどうか、すなわち、コストに対する学びを最大化し、失敗による損失を最小化した上で判断を行うことができるか、と話し、小さく・短く・安く仮説を検証し、「学ぶ」回数を増やしてこそ、本当に必要とされる事業案にたどり着くことができる、とまとめました。

続いてJICAからは3つのグループにわかれて講演が行われました。

まずは、渡辺英樹氏(JICA アフリカ部 計画・TICAD推進課 調査役)に登壇いただき、アフリカの成長の可能性についてご紹介していただきました。

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JICAは、海外約100カ所、国内でも15カ所の拠点を持っています。

中でもアフリカには29カ所の事務所があり、9000人以上の専門人材を派遣しています。公的な援助機関として、途上国政府との強いパイプを持っており、途上国で働く人々を日本に召集し、日本の優れた技術を学ぶ場を提供する研修事業では、累計2万人以上が参加している、と渡辺氏。

アフリカの定番イメージを聞くと、一般的には野生や貧困などのイメージがあるかもしれませんが、実際にはアフリカとひと言にいっても、54もの国、人口は約10億人で日本の8倍ほどの規模があります。ポテンシャルも高く、労働人口も2050年には中国やインドを抜く勢いがあり、平均年齢が若い大陸ということもあり、モバイルの普及率も伸びていると紹介しました。

一方で、アフリカは、農業、教育、観光、ヘルスケア、エネルギー、水など、多くの問題を抱えており、それらを情報やITを活用して今後解決していきたい、と今後の展望を語りました。JICAはこれらの課題解決について、様々な人のノウハウやアイデアを活用していきたいと考えており、

リクルートと協力してこれらの問題を解決できる可能性があるのではないかとお話しいただきました。

続いて内藤智之氏(JICA 国際協力専門員)から、「JICA インパクト事例『ICT(Information and Communication Technology)立国ルワンダ』のイノベーション・エコシステム」というテーマでお話いただきました。

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ルワンダはアフリカの中央にある小さな国で、資源はほとんどないものの、国の基本方針として「ICT立国」をかかげています。過去に虐殺という悲劇的な出来事もありましたが、現在は人口やGDP(3割が一次産業)も伸びており、現在では『アフリカの奇跡』とまで言われているそうです。

しかし、人口とGDPの成長に反し、農業は右肩下がりです。そのため、国はその部分をICTでの改善を目指しているそうです。ルワンダは特にICTインフラへの投資が進んでおり、現地でSIMフリーの携帯電話を使うと、その通信速度の快適さに、訪れる人々がみな、「誰もいない高速道路を走っているようだ」と形容するほど驚いているそうです。

さらにルワンダには、一般的なイメージのアフリカっぽさはあまりありませんと紹介。現在は「Ms.Geek(ミス オタク)コンテスト」が行われていたり、物流のトラックの追跡システムやプロパンガスの交換サービスなどのシステムが作られているなど、IT分野でアフリカの先頭を走っているような印象があります。同氏は最後に「ルワンダを見ていると、面白いことがアフリカに起こりそうな気がしてくるので、みなさんにも注目してもらいたいです!」とメッセージを送りました。

そして最後に、JICAの「農業」、「ヘルスケア」、「教育」、「観光」、「人材育成」の5つのグループからそれぞれの分野ごとに現状と課題についてご報告いただき、アフリカの現状について解説していただきました。

農業分野:
人口約10億人のうち、農家が6~7割を占めているアフリカですが、生産額にすると、GDPの2~3割と、生産性が低いのが現状です。その一番の原因は、農家が野菜などの一般的な市場価格を知らないため、稼げる農業になっていないことだそうです。そこで、どうしたら農家とマーケットをつないでいけるのか、様々な角度からアプローチしていきたいと語りました。

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ヘルスケア分野:
アフリカでは、医療機関へのアクセスや料金設定がニーズに合っておらず、病院に行かない人がほとんどだそうです。その問題を解決するために、多くの母親が持っている母子手帳を電子化、携帯電話で見れるようにし、便利で安価な(コストが少ない)医療の実現に向け、動き出しているようです。また、携帯電話を使ったマラリアの診断システムを開発し、その場で診察が出来るというシステムも導入しています。その効果もあってか、これまで年間2億人がマラリアにかかり60万人以上が亡くなっていましたが、その数も急激に減ってきているとお話いただきました。

教育分野:
この10年間、アフリカの教育は向上していると言われていますが、国際的な教育目標に届いていないのが現状です。中でも教育の質、学びの質が求められていますが、教育分野だけでは解決できない問題も多くあります。例えば、産業界と教育、訓練セクターに密接に関われる人材をどう育成するかは課題の1つです。また、雇用の数は圧倒的に足りておらず、失業も大きな問題です。そのため、JICAでは、現地の若者のために “ABE(African Business Education)イニシアチブ”という、修士課程およびインターンシップの教育プログラムを実施しています。このプログラムを通じて、すでに500名ほどの若者が、日本の大学に留学しており、この数はどんどん増えているそうです。このABEイニシアチブは、日本の企業も密接に関わっており、将来日本企業がアフリカに進出する際の水先案内人や、現地のパートナーとなる人材を育成するために、このインターンシップの制度を利用してもらっています。ABEイニシアチブで日本に訪れている若者たちに対しては、「自国の発展に対して当事者意識を持って、日本滞在中に成長を感じてもらい、将来的に日本とアフリカの架け橋になる人材になってほしい」とメッセージを送りました。

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観光分野:
多くの方がアフリカ観光に期待するものは野生動物ですよね?そうした人気の観光資源とは別に、多くの世界遺産などの文化があります。アフリカにある95の世界遺産のうち、49が文化遺産ですが、残念ながら、そういうものに注目が集まっていないのが現状です。さらに、現地の人々は、なぜ観光客がその文化遺産を見に訪れているかを理解していません。文化遺産を守っていくには、まず、地域の人たちに自分達の文化の大切さを知ってもらう必要があります。文化遺産を守っていくことで自分たちに利益をもたらすということをわかってもらうために、持続可能な観光開発を進めていきたいとお話しいただきました。

人材育成分野:
アフリカで「仕事」をテーマにしたときに、ふたつ大きなテーマがあります。
ひとつは若年層の雇用の問題です。アフリカは人口が増えていく大陸ですが、それにもかかわらず、民間セクターが成熟しておらず、働くための場が多くないのが現状です。
もうひとつの問題は、職と人材のミスマッチです。アフリカには、大学院を卒業したエリートと、それ以外の人たちがいます。しかし、こちらも民間セクターが未成熟のため、エリートが働く場所がありません。またその一方で、労働者には実践的なスキルが足りていません。アフリカの製造業の課題は、生産性が低い点ですが、労働者はマネージャーに指示されるまで、自主的に行動をしません。これらを改善するために、ひとりひとりが考えて行動する人材を育成する手助けをしています。今後、より競争力の高い製品を作っていくには、デザインを自分たちで考えていくなど、クリエイティビティも必要になってきます。日本のファッションとアフリカのファッションを掛け合わせるなど、クリエイティブ産業でも支援できる方法を模索している、と今後の展望をお話しいただきました。

5つのグループからのお話に続き、この会場に訪れていたマダガスカルやケニアなどの国から来ているABEイニシアチブの学生たちの挨拶がありました。

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インプットセミナー後は、「農業」、「ヘルスケア」、「教育」、「観光」、「人材育成」のテーマごとにJICAとリクルートのメンバーが分かれて、分野ごとにそれぞれの課題についてディスカッションをしました。今回は時間の関係で主に自己紹介を中心に、まずはお互い知り合うところからスタート! テーブルごとに、それぞれに感じている課題を「共有」しながら話し合われました。

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また今回初の試みとして、チャットサービスのSkypeを使ってアフリカにいるJICAの担当者との中継が行われました。現地の天候が不安定だったため中止になりかけましたが、なんとか無事に実現!日本国内から感じたアフリカの状況など、様々な質疑がかわされました。

ワークショップ終了後は交流会へ! 会場全体が、賑やかな雰囲気に包まれた中、無事今回のコラボレーションが終了しました。

参加者からは、「時間が足りない部分もありましたが、冒頭のプレゼンテーションで基本ノウハウが学べた」、「国内にばかり目を向けていると気がつかない、海外の課題が聞けて勉強になった」といったお話を聞くことができました。

このコラボレーションを通じて、今後どのようなイノベーションが生まれてくるのか、大きな期待とともに見つめ続けたいと思います。