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リクルート石山洸氏がDataRobot Razi氏らAI専門家と語る、
「AIは人間の仕事を奪うのか」-TechCrunchTokyo2015

2015/12/07

2015年11月17日(火)、リクルートホールディングス(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 兼 CEO:峰岸真澄、以下リクルート)がダイヤモンドスポンサーとして協賛した「TechCrunch Tokyo 2015」が開催され、石山洸氏(Recruit Institute of Technology推進室室長)と、リクルートの投資先(※)であるDataRobot Inc.(本社:米国マサチューセッツ州、CEO:Jeremy Achin)のRazi Raziuddin 氏、ほか山本一成氏(HEROZ エンジニア 将棋AI「Ponanza」開発者)を交えたパネルディスカッションが行われました。

モデレーターは「TechCrunch Japan」編集長の西村賢氏。ディスカッションは主に「AIは人間の仕事を奪うのか、ラクにしてくれるのか?」というテーマにそって展開しましたが、石山氏が壇上でDataRobot Inc.への出資を発表したこともあり、リクルートの目指す世界観についても話が広がりました。

モデレーターの西村氏は「AIは長い冬の時代を超え、3次ブームとして花を開いている状態です。一方で、AIが人間の仕事を奪うという論調があります。スタートアップをみても、AIを適用した分野の躍進が目立ちますし、既存の事業でもAIを使うことが目下の課題となっています。」と前置きしたうえで、壇上の3人それぞれが手がけていることについて説明を促しました。

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【モデレーターを務めたTech Crunch Japan編集長 西村賢氏】

リクルートが機械学習プラットフォームのDataRobotに出資したのはなぜ?

最初にマイクを手にしたのはRazi氏。
「企業が多くのデータを保有するようになったいま、優秀なデータサイエンティストをどの企業も必要としています。しかし、異なるスキルセットを有する人材が不足している現状がある。その問題を解決する手段が、私たちが提供する汎用機械学習プラットフォームであり、データサイエンティストの業務効率改善や、データサイエンティストではない方のデータ活用を支援します。」と語りました。各領域に特化したビジネスユーザーが使うことで、新しいビジネスの可能性が見えてくるとも。
たとえば金融では、ソーシャルなデータを用いたアイデンティティ分析によって、新しいサービスを開発しているといいます。

次にマイクを手にしたのは、石山氏。
DataRobot Inc.への出資を発表したことで、西村氏から「リクルートはAIへの投資に意欲的ですが、その戦略は?」と質問を受けると、「リクルートは過去10年、データサイエンスの数々の取り組みを行ってきました。今後リクルートが目指す一つの姿として『2020年に人材領域でグローバルNo. 1』『2030年に人材領域と販促領域でグローバルNo. 1』を掲げています。実現に向けて、技術レベルをグローバルトップレベルへと高める。そして、データサイエンスを用いた新しいビジネスを創造します。この4月に、AIの研究所を設立したのも、その一環です。」と述べました。

さらに、AI研究所の運営における課題として、高い人材要件を満たすデータサイエンティストの採用が難しい点をあげた。具体的には、英語力としてTOEIC900点以上、機械学習の博士号(Ph.D.)を持っており、データサイエンティストとして職務経験があること、もちろんコードも書けること、さらにはアントレプレナーシップを持っていること、と言うからまさに驚きの人材要件です。

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【石山洸氏(Recruit Institute of Technology推進室室長)】

採用が難しいことの解決策として、社外にリソースを求めるオープンイノベーションを推進していると話し、今後DataRobot Inc.と共にAIの研究を推進してゆく、と述べました。
メディアの取材で「AI研究所には、何名のデータサイエンティストが在籍しているのか?」と聞かれ続けていたことにも触れ「現在、データロボットには、機械学習のアルゴリズムが4000万個あるんです。メディアの取材などで『AI研究所には何人のデータサイエンティストがいるのか?』と訊ねられることが多かったのですが、今度は訊ねられたときには400万人相当で、ひとりあたり10個のアルゴリズムをつくっていて、4000万個くらいのモデルが動いていると答えられそうです。」と話しました。
これを受けたRazi氏は「データロボットのいちばんの売りはデータサイエンティストの経験です。難易度の高いコンペで40万人のデータサイエンティストが競い合って生まれたのがデータロボットです。」と説明しました。

将棋のAIロボットは羽生氏に勝てるレベル?

そして、山本氏。
最強のコンピュータ将棋用AIの開発者として、西村氏から「将棋のAIロボットは羽生氏に勝てるレベルに達しているんでしょうか?」と問われると、「倒せるんじゃないでしょうか」と返答。
さらに、パネルディスカッションのテーマにも通じる見解として、「やがてコンピュータ上位の世の中になるでしょう。いろんな分野でコンピュータができることが増えると、人間はなにをしてよいかわからないという声もでてくるはず。でも別の側面があります。なにをしてよいかわからないというのは、元気な方の話し。ハンデキャップを抱えている方にとっては、技術が救いとなります。物事には、ポジとネガ、ふたつの側面がありますが、私はポジティブにとらえてゆきたいですね。」と語りました。
さらに「人間に勝ち目がないというわけではないんです。たとえば殴り合いのような真っ向勝負だとコンピュータが有利ですが、いきなり寝技を仕掛けたりするとコンピュータは弱い。混乱してしまうんです。」と説明しました。
一方で、「クリエイティブな領域は人間の専門領域と思いたい。」との西村氏の発言には、「将棋に関して言えば、AIもクリエイティブ。人間がこれまでの価値観で類推するのに対し、AIはフラット。人間が知らなかった手を開発することができます。事実、いま人間がさしている手のうち、AIが見つけたものも多いんです。」と話しました。

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AIは人間の仕事を奪うのか?

そしていよいよ、パネルディスカッションのテーマをもとに「AIが適用できる仕事が増えていく流れを受け、10年、20年でどのように推移していくか?」との問いかけが。

山本氏は「面白い話があります。強いコンピュータに対し、人間と弱いコンピュータが連合で立ち向かうと、連合チームが勝ちます。人間は、コンピュータが間違いやすいところが分かるんです。」
「コンピュータが目の前の、細かいことに目がゆくのに対し、人間はレイヤーが上のことほど大事ととらえる。そのため戦術ではコンピュータが長けているけれど、戦略では人間が強いことがわかっています。」と述べたのち、一方で別の視点も。
「私は、今世紀中に人間の仕事はAIにとってかわられると思っています。なんらかの救済措置が発令され、食べることには困らない世の中になると予測していますが、それとは別にアイデンティティの危機にさらされるのではないかと考えています。過去、人類は仕事がないという状態を経験してこなかった。やることがない、社会の役に立ってないという状況をどう受け止めるのか。既存の価値観からの脱却が必要となるでしょう。個人的には、そもそも役に立っていないと不安、怖いという発想自体が危険だと思っています。仕事がなくても、楽しく将棋をさす、釣りをする、ネトゲーをする、そういった意識転換が鍵となるのではないでしょうか?」と語りました。

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石山氏は「共進化が起きると思っています。人間とAIが、ともにインタラクティブに学ぶことで成長していく。たとえば将棋の世界には必勝法があります。人間が演繹的に解こうとしても解けないけれど、AIが理解することによって、人間も理解できるようになる。汎用機械学習プラットフォームも同じ。人間が演繹的に理解できないことをAIが学習してくれて、かつそれを、コンピュータを通じて人間が学習することで、データサイエンティストとしての能力そのものを高めることができる。人間自体もエンパワーメントされていく可能性があると考えています」

Razi氏は「私は楽観主義者なんです。新しい技術が生まれると、確実に動揺が走ります。でも、それは一時的なこと。どうやって新しい技術を使いこなすか、それを仕事に、ライフスタイルに適用させるかを考えることが大切だと思うんです。AIと戦う、新しいイノベーションと拮抗させるという発想ではない。破壊的イノベーションに対抗するのではなく、その一部になるんだと考えるんです。とくに起業を考えている人にとっては、チャンスといえるでしょう。うまく活用して新しいビジネスを考える、新たな起業の方法を考える。悲観的にならず、チャンスととらえるべきです。」

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さらに石山氏が、ムーアの法則を引き合いに「ITビジネスの参入障壁がさがったことで新しい職業が創発されている流れにも見られるように、新たな職業が創発されるとともに既存の職業の定義が変わってゆくのではないでしょうか? そこにオポチュニティ(努力の結果によって得られる機会)があると思います。」と語ると、Razi氏もこれに同意を示しました。

今世紀中にはAIが人間の職業を奪うという厳しい見解もありました。
一方で、新しい職業が増えていくという可能性の提示も。現時点では、答えがでないディスカッションです。
ただ、AIが世の中を一変させることは確実。目の前で起きていることと向き合い、自ら考え、感じ、行動しつづけることに意味がある。その先に人類の可能性があり、未来がある。異なる視点がクロスオーバーした今回のディスカッションは、そこに至る考えの幅を広げてくれたように思います。未来は用意されているものではなく、創るもの。私たち次第。R&Dweb編集部としても改めて、そう考えさせられたディスカッションでした。

DataRobotとリクルートの今後の展開に期待

最後に、ディスカッション後の一コマを。DataRobot Inc.は、リクルートからの出資(※)を受けるだけでなく、AI研究所との事業提携も行っています。
今後の展開を期待させる石山氏とRazi氏の笑顔が印象的でした。

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【写真左からRazi氏、石山氏。パネルディスカッションを終えて、リラックスした雰囲気!】

※株式会社リクルートホールディングスの子会社である、株式会社リクルートストラテジックパートナーズの運営する合同会社RSPファンド6号を通じて出資
汎用機械学習プラットフォームを提供するDataRobot Inc.へ出資および人工知能研究所RITと事業提携