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PS4のUI開発から2017年のUXトレンドまで。 -UX JAM & UX Sketch

2017/05/02

毎月、UXをテーマにしたイベントを開催している、2大コミュニティUX JAMUX Sketch。そんな両者が初めて共同で企画したイベント「UX JAM & UX Sketch」が2月15日、FreakOut(フリークアウト)のイベントスペースにて開催されました。

事前の応募は800名超えるなど、注目度も高かったこのイベント。当日はどのようなことが話されたのか?ここでは、その模様をお伝えします。

 

2017年、気にしておかないと乗り遅れる17のUX

今回のイベントは3名のライトニングトークとパネルディスカッションが用意されていました。最初に登壇したのは、株式会社エクサの安藤幸央さん。

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2017年、気にしておかないと乗り遅れる17のUX」をテーマに、今後のトレンドになりうるであろう17個のUXのトピックを紹介しました。

  1. コピーライティングにも気を配る
    最初に取り上げたのが、コピーライティング。安藤さんは「コピーライティングはUXを設計するにあたって重要な要素の一つなのに、おざなりにされている」と言います。 例えば、下記の文言。
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    キャンセルしない場合はキャンセルを押すなど、非常に分かりづらいものとなっています。それを踏まえ、「コピーライティングはインターフェースデザインそのもの。1文字は1ピクセルと同じくらい大切なものです」と安藤さん。今後はコピーライティングの重要性が高まるとのこと。
  1. ハマる仕掛けをつくる
    次に取り上げたのが“ハマる仕掛けをつくる”こと。内と外の両方から影響を受けるトリガーを用意しておくことが大切だそう。
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  1. 心理的トリガーを仕掛ける
    それに加えて、心理的トリガーを仕掛けるのもユーザーをハマらせるためには重要とのこと。安藤さんは「一貫性の原理や物語(ストーリー)、お買い得感など30個の方法がある」と言います。
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  1. 組織におけるUXの重要度を高める
    近年、UXの重要度が叫ばれていますが、今後は組織におけるUXの重要性も高めていった方が良いとのこと。「UXの重要性が社内に根付くように働きかけていくことも、デザイナーの仕事の一つになる」と安藤さんは言います。
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  1. ホスピタリティ
    UXを設計するにあたって、ホスピタリティの考えを持つことは非常に重要ですが、安藤さんは「ホスピタリティは自然に作り出せるものではない」と言います。必要な情報をしっかりと開示するなど、ホスピタリティは意図的に作り出していかなければならないそうです。
  1. 高齢者を意識したUX
    今後、高齢者が増えていくにつれ、UXも高齢者を意識したものにしなければなりません。ただし、文字を大きくするといった簡単な話ではなく、直感的にわかるデザインなどさまざまな工夫をしていかなければならない、とのこと。
  1. こども向けのUX
    その一方で、こども達も当たり前のようにスマートフォンやタブレットを使う時代。「より分かりやすさを意識したUXにしていくことが求められる」と安藤さんは言います。
  1. UIはいらない
    UI(ユーザーインターフェイス)という言葉も一般化しつつあり、どの企業もUIを意識したサービス設計を行っていますが、「何を使わずとも目的を達成できるのが一番」と安藤さん。UIに頼りすぎるデザインの設計は望ましくないとのこと。
  1. 複雑なUIにはそろそろ飽きがくる
    “8.UIはいらない“に付随し、これからは複雑なUIに飽きが来るとのこと。今後はよりシンプルなUIが求められるそうです。
  1. 始まりも終わりもない、ストーリーを考える
    ちょっとした瞬間にサービスを使い始め、ちょっとした瞬間に使うのをやめる。スマホやSNSが普及し可処分時間の奪い合いになっている時代だからこそ、「始まりも終わりもないストーリーを考えることが重要になってくる」と安藤さんは言います。
  1. 人が求めているものを理解して、UXを設計する
    人が求めているものを理解し、どういうやりとりをするか。それを考えるのがデザイナーの仕事になってくるそう。
  1. 失敗したときにどうデザインするか
    デザインをするにあたって、上手くいくことが当然求められますが、失敗したときにどうデザインするかが今後の課題になってくるとのこと。
  1. 分析結果を行動につなげる
    UI/UXを設計するにあたって、どの企業もアナリティクスなどを使って数値の分析などをやっていると思います。ただ、分析しただけで終わらせるのではなく、いかに行動に結び付けるか。今後そこを考えるのがデザイナーの仕事になってくるそう。
  1. 洗練させすぎない
    洗練されたUX=良いもの、というイメージが強いですが、果たしてそのUXは自社のブランドに適しているのかどうか。そこを考え抜くことが大切になるとのこと。安藤さんは「洗練させることが正解ではなく、ブランドごとに適したデザインがあるはずです」と言います。
  1. 古びないUXが重要になる
    めまぐるしいスピードで移り変わる、UXのトレンド。もちろん、そのトレンドを取り入れたUXの設計も大事ですが、その一方でいつの時代になっても古びないUXを設計することも大切になってくるそう。
  1. コミュニケーションの距離感もデザインする
    InstagramやSnapchatなど、次々に新たなサービスが登場することで変化しているコミュニケーションのあり方。そうした状況を踏まえ、「人と人とのコミュニケーションの距離感をデザインすることが大切になってくる」と高橋さんは言います。
  1. デザインはビジネス、テクノロジーとも組み合わせる
    デザインとテクノロジーとビジネス。それぞれ別の領域として捉えられることが多いですが、今後はそれぞれが一つの分野として考えることが求められるそう。

最後に安藤さんは、「今年は酉年ですが、動物でもあり、鳥でもある“ふくろう”のようにデザインやビジネスなど、いろんな領域にまたがって仕事をするのが今後のデザイナーに求められると思います」と語り、ライトニングトークを終えました。

当日のスライドはこちら

 

日常から学ぶデザイン – 道具と体験の関係性

次に登壇したのは、クックパッド株式会社 デザイナーの倉光美和さん。「日常から学ぶデザイン – 道具と体験の関係性 -」をテーマにお話しいただきました。

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冒頭、倉光さんは「手に馴染むデザインは私たちの日常に溢れており、そこにはデザイナーとしての視点を養うたくさんのヒントが隠されている」と言います。
例えば、お店の厨房にある電話や新聞、ほうきなど……。日常に馴染んでいることから、あまり意識して見ることのない道具ですが、倉光さんは5つの視点を持って見てみるといい、と言います。

  1. 道具のない日常とは?

「その道具がない時代にどう課題を解決するかを考えると、本質的な欲求が見えてくる」と倉光さん。例えば、VRゲームもけん玉と似ています。両者とも、楽しみたいから道具を使っています。40年経ち、道具は変わりましたが、本質的な欲求は変わらない。だからこそ、その道具がない日常と想像してみると良いそう。

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  1. その道具は、なぜこの姿に?

「形態は機能に従う」という言葉があるように、かたちには環境や人間になじむ姿になったヒントが隠されているとのこと。

例えば、電車のつり革。何の考えもなく電車内で掴んでいる人も多いと思いますが、「もしハート型だったら?」、「なぜ長さがまちまちなのか?」など色んな角度からツッコミを入れていくことで機能が見えてくるそうです。

  1. その道具は、人をどう変えた?

「良い道具には人の習慣を少しだけ変える力がある」と倉光さんは言います。例えば、冷凍うどん。これまではお湯を沸かしてゆがかなければなりませんでしたが、レンジで調理できる冷凍うどんが登場したことにより、「それなら自炊してもいいかな」という気持ちになる。このように、道具が人をどう変えたかを考えてみると面白いとのこと。

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  1. 道具が馴染んでいない理由とは?

サービスやアプリにエラー画面はつきものですが、現実世界でもエラーはよく起きているそう。倉光さんが例に挙げたのは美術館の傘立て。来場者の多くが帰りに傘を忘れてしまい、全然空きがなくなってしまっていたとのこと。

「美術館の出口に過剰なほど看板が出ている。つまり傘立てが環境に馴染んでいない。道具として環境にうまく適応していない状況から改善のヒントを探る。こういったものを見かけたときに、どうすれば人は道具に馴染むのかを考えてみるといいです」と倉光さん。
この場合、傘立ての置き場所を変えるだけで傘を忘れる人の割合は少なくなるとのこと。

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  1. その道具は懐が広いか?

「日常に馴染んだ道具はしばしば意味の拡張をすることがある」と倉光さんは言います。例えば、三角コーンは使い勝手の良さから看板に変えられてしまうといったことが起きている。こういった事象を探してみると良いそう。

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最後に倉光さんから「日常の道具を深読みすることで、UXへの視点を養おう」とメッセージを送り、ライトニングトークは終了しました。

 

世界規模で体験をデザインする – PS4のUI開発やUXの経験から

最後に登壇したのは、ネオマデザイン株式会社 CEOの河野道成さん。「世界規模で体験をデザインする – PS4のUI開発やUXの経験から」というテーマで、ライトニングトークを行いました。

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2013年に発売されたPlay Station4(以下、PS4)。現在使っているという人も多くいると思いますが、みなさんはPS4が音声認識操作や顔認識ログインができるのをご存知だったでしょうか?

その音声認識操作を手掛けたのが、河野さん。「PS4に新しいUIを取り入れたいので、何か考えてください」という要望があり、当時、Siriなどの音声検索エンジンが登場したこともあって、音声認識操作を取り入れることにしたとのこと。

映画などではしばしば登場し、カッコいいイメージのある音声認識操作ですが、現実は真逆。読み取りの悪さにイライラする人が多く、当時SIriやGoogle Nowは全く使われていませんでした。ゲーム機には“コントロールパッド最強伝説”というものがあり、音声中心のUIになることは現実的ではなかった、と河野さんは振り返ります。

そこで着目したのが、パッドに出来ないことを出来るようにするということ。「何かを持ちながら使える」、「見えないところが選べる」、「ステップ数が減る」などパッドができないことを洗い出し、それを音声認識操作でサポートする。パッドとの併用を前提にして開発が進められていくことになりました。

実装にあたっては、ヒント表示をどこまで出すか、ファイナルファンタジーを「ファイファン」、「エフエフ」と表現していいのかといったゲーム名の規約、グローバル対応など、さまざまな苦労があったそうです。

「音声認識操作はすごく流行っているように見えるのですが、実際に使いこなすのはすごく難しい。まだまだ自然発話ではないですし、認識ミスやレスポンスミスによる期待外れ感も大きい。完璧ではない人間の言語を知らないといけないのかな、と思っています」と河野さん。

音声認識の開発経験をもとに、音声UIの苦労した点や課題感が共有されました。

 

新規事業におけるUXDの役割を深掘る

 

ライトニングトークの他に、今回はパネルディスカッションも開催。登壇者は株式会社ココナラ共同創業者 取締役の 新明智さん、株式会社ザッパラス デザイナーの藤井幹大さん、ROLLCAKE Inc. 取締役兼デザイナーの伊野亘輝さんの3名、ファシリテーターはMedia Technology Lab.の松川が務めました。

新規事業におけるUXDの役割」をテーマに、パネルディスカッションが行われました。

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松川:
新規事業においてビジネスの成功をとるのか、それともデザインの成功をとるのか。どちらが大事にだと思いますか?

新明さん
フェーズによって全然違いますし、環境によって異なりますよね。ただ、ユーザーに価値を提供してお金をいただくことを前提とすると、両方大事かな、と。
ココナラは現在、ビジネスの成功を求まれるフェーズにいますが、ビジネスとデザインの成功の両立ができないわけではないと思っているので、しっかり社員全員と方向性の目線合わせを行っています。

伊野さん
新規事業を立ち上げるにあたって、ビジネスのことを考えなければならないこと。お金を儲けて、それをサービスに還元していく。このサイクルを作っていけばいいのではないでしょうか。

新明さん
やっぱり、ユーザーに価値を届けることとお金を儲けることが一致していないと難しいのかな、と思います。

 

松川:
体験とビジネスの場合はどちらを優先させますか?

藤井さん:
モノ→価値提供→ユーザー行動→事業の存続の4つの要素のサイクルを回して成長しつづけるスパイラルを設計することが事業であって、その中で体験を損なうことが事業に影響するならば体験を追求していくべきです。

 

松川:
ここを改善すればユーザーの体験は上がるはずだけど、売上が落ちるかもしれない、という話を時々耳にするのですが、なぜそういったことが起きるんでしょうか?

新明さん
それは時間軸が違う話なのかなと思います。ど短期で売上は落ちるけど、中期的に見て取り返せればいいと思います。ユーザーが慣れていないだけで売上が落ちることもあると思いますが、それをいかに許容できるかどうか、ではないでしょうか。

伊野さん
それに加えて、自分たちとやりたい方向のズレもあると思っています。売上は上がりそうだけど、自分たちがやりたいこととは違う。もしくは、会社次第ですかね。自分は利益を追求する会社があってもいいと思いますし、自分たちがやりたいことを追求する会社もあっていいと思います。

 

松川:
最後に新規事業におけるUXとは?

新明さん
UXデザイナーはビジネスもユーザーも両方見ていかなければならない立場です。新規事業と呼ばれるフェーズでユーザーのことを考えなければ、事業として上手く立ち上がったとしても、段々プロダクトがぐちゃぐちゃになっていき、自分たちが何をやりたかったのか分からなくなってしまいます。なので、新規事業におけるUXは、ビジネスとユーザーを両方考えること、ですかね。

藤井さん
新規事業におけるUXデザイナーの立場、でいいでしょうか?ビジネスやシステムはどうやってモデルを使って単純化して議論すればいいのか、洗練されてきています。ただ、ユーザーに関してはそうした議論はあまりされていないんですよね。なので、デザイナーはUXデザインの手法をビジネスモデルやシステムにと同じように抽象化し説明するためのツールとして使えて、それらを包括した事業全体の設計に参加できるようになっていければいいんじゃないかなと思います。

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伊野さん
まず、デザイナーの役割はビジネスの成功確率を上げることだと思っているんです。“とりあえず、それっぽいもの”を作ってしまうとデザイナーへの投資額が少なくなってしまいます。エンジニアは効率の最大化ができるので、効果が見せやすいですよね。その一方で、デザイナーがすべき“成功確率を最大化すること”の効果は説明しづらいのが現状です。ただ、そこを頑張っていかなければ賃金を含めたデザイナーへの投資額を拡大していけないと思います。なので、絶対にUXは必要だと思ってもらえるように、ユニオンを組むなどしてみんなでデザインの価値を高めていけたらいいですね。

 

非常に内容が盛りだくさんだった、今回の「UX JAM & UX Sketch」。今後もUXに関するイベントは定期的に開催していく予定ですので、興味のある人は参加してみてください。