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UXではないUIUXの世界 -UX Sketch vol.13レポート

2016/08/18

7月11日(月)、銀座・Media Technology Lab.(以下、MTL)Caféにて、UX Sketch vol.13が開催されました。

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今回のテーマは「UXではないUIUXの世界」。

様々なバックグラウンドをもつ3名をゲストとしてお招きし、それぞれのご経験や、それぞれの立場から、UIとUXについて語り合いました。

<登壇者>

鷲山優作 / サイバーエージェント UIUX Lab代表
佐藤ねじ / アートディレクター/プランナー
葛本尊広 / 株式会社ムーヴ 代表取締役 ディレクター
松川進 / UX Sketch

まずは、UX Sketch主催者のMTL UX開発グループの松川より、オープニングトークをさせていただきました。

まず、最初に「UI/UXという単語が毛嫌いされているのでは?」と会場に提言。
その理由となるであろう、2つの考え方を挙げました。
1つ目は「UIとUXは別物なんだけど?」という考え方。
そこで「UIUXデザイナーは雇わない方がいい理由」という記事を紹介しました。記事の中では、「UIUX」デザイナーではなく、UIデザイナーとUXデザイナーそれぞれを雇った方が良い、と書いてあるのです。
またUXにおける4つのタイムスパンがありますが、UIUXというのは、その中の「一時的なUX」である、と思う人が多いのでは?と話しました。

2つ目は「UIUXって言葉だけいいように使われていない?」という考え方。
例として、採用ページなどにある、「UIUXデザイナー募集」ってなんなの?って思ったことありませんか?と会場に語りかけ、「UIUXデザイナー」を募集している会社は、UXをあまりわかっていないのでは? 上級のUIデザイナーという意味で使われている? いい感じにやってくれるデザイナーって思われてない? といった考え方があることを紹介しました。

最後に、本質的にはUIとUXは究極的には、リレーションシップデザインという考え方もある、と紹介しました。

続いて、「UIUX」について取り組まれている鷲山優作氏(サイバーエージェント UIUX Lab代表)より、お話しを伺いました。

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鷲山氏は紙媒体のデザインや、Webデザインの制作を担当したのちに、サイバーエージェントの子会社であるグレンジにデザイナーとして入社、クリエイティブディレクターを経て、役員に就任。
そして2016年、サイバーエージェント内に、スマートフォンゲームに最適なUIUXを研究する組織「UIUX Lab」を設立されました。
スマホにおけるゲームの流行が、ブラウザゲーム、主にカードバトル中心から、ネイティブアプリゲーム中心へと移っていく中で、ユーザーの方にとってわかりやすいだけでなく、使っていて心地よく楽しめるスマートフォンゲームUIUXデザイン設計をしていかないと勝てない、という危機感からUIUX強化の役割を果たすためにUIUX Labは設立されました。サイバーエージェントのゲーム事業に携わる人の中で、UIUXを「わかる」人材を獲得・育成していくことが目的、と紹介しました。

次に、鷲山氏の「UIUX」の考え方として、UIはUXを構成する一つの要素だと位置づけている、ただし、インターネットを通じた事業を核としているサイバーエージェントにおいて、UIはとても身近な存在だ、と話しました。
また、「UIUX」の何が問題なのか、という疑問について、鷲山氏の考えをご紹介いただきました。
例として、UI改善=UX向上のこと? UXは見た目イケてるUIのこと? と考えられがちだけど、(ケースバイケースであることが大前提だが)どちらも間違っていることが多い、そうではなくて、UIは目的遂行するために使われるものだと語り、UIUX Labについても、目的を遂行できるUIをいかにして設計するかを一生懸命考えられる組織にしたい、と展望を語りました。

続いて、「UI」について、葛本尊広氏(株式会社ムーヴ 代表取締役 / ディレクター)にお話しいただきました。

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葛本氏は、1985年からグラフィックデザイナーとして、大手企業の広告の制作を担当、2009年には、社内ベンチャーとして、アプリのデザインを手がけていましたが、もっと自分の好きな表現をしたい! と、2012年に独立、スマートデバイス専門のUIUXデザイン会社を設立しました。
もともと所属していた会社の、コピーライターをUXデザイナーとして、グラフィックデザイナーをUIデザイナーとして招き入れ、期待すること・役割を明確にし、徐々にスキルを磨いて行ってもらったそうです。
奇しくも、松川が先に紹介していた、「UIUXデザイナーを雇うな」という言葉に葛本氏も感化されそう。UIとUXを別の人物が担当、それを葛本氏がディレクションする体制に落ち着いた、と話しました。
常に、ユーザーの利益を念頭に置き、自分が制作するものが“成功”するためには、何が必要で何が不要かを考え、プロジェクトを通して一貫性のある体験をデザインすることを心掛けている、と話しました。
また葛本氏が感銘を受けた言葉として、リチャード・ソール・ワーマンの「情報デザインのゴールはユーザー内に力を与えることである。」と紹介、自身もこれを目指していきたいと語りました。

最後に、「中立」の立場の佐藤ねじ氏(アートディレクター / プランナー)をお迎えしました。

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カヤックに所属(2016年6月現在)する佐藤氏は、「不真面目UI/UX」担当、と自身を紹介、その理由としてUXを語るのは怖い、変に語ると怒られそうだから曖昧な感じにしてごまかしたい、と本音を漏らしました。
佐藤氏のご活躍の例として、UIデザインに加え、UXデザインも手掛けたというKocri、カヤックのコーポレートサイトリニューアル、また個人ワークとして、レシートレターを紹介しました。
UXが怖い、と話した佐藤氏ですが、UIUXは好きだし敵にも回していない、ただ、定義をひっくり返したところにおもしろいことがあるのでは?と考えた末にたどり着いたのが、「UIをばかにしたシリーズ」とのこと。Webなのに何も置いていない、「すごいWEB」や、おしゃれなイメージを持たれがちなUI関連のイベントを、あえてちょっとボロい場所で行ったUI温泉など、佐藤氏ならではの作品例をご紹介いただきました。

また、UXの中の利用後にその経験を内省する「エピソード的UX」が個人的にはオモシロイと思っていると話し、こちらについてもいくつか事例をご紹介いただきました。

貞子3D 2のプロモーションのお手伝いをされていたそうで、映画とスマホを連携させ、映画上映中と、映画を見た後深夜0時に貞子から着信する演出を試みたそうです。こちらは、かなり好評だったとのこと。

また、利用中の「一次的UX」もオモシロイ、と話し、「体験中に見ているものをおもしろくできないか?」と考え、「鏡で見る怖い話」を紹介しました。全ての文字が反転しているため、読むためには鏡に映す必要があり、怖さを増幅させることができた、と話しました。

最後に、UXの理論を学んだ上での施策ではないが、理論がわかれば、いろんな発想ができて表現が広がる。と会場にメッセージを送りました。

ゲストのトーク後は、パネルディスカッションを行いました。

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まず、松川より、とある国のテレビ局のWebサイトを紹介しました。このWebサイトは毎回UIがイケてないらしいのですが、最新のサービスを使えることだけは担保されているそう。「提供できる価値さえ提供できていれば、(UIは良くなくても)問題ないという考え方もあるけど、どう思いますか?」と質問。

そこで鷲山氏は、「あえてUIを悪くすることはないが、良い方が間口が広がるのでは?」と提言、続いて、佐藤氏も「自分が担当ならきれいにするけど」と話した上で、「例えば、メニューの字詰がおかしいけど、味はおいしい蕎麦屋ってありますよね?」と同意を求め、「蕎麦屋は蕎麦屋らしいUIならそれでいい。正解が1つということはなくて、いろんな答えがあってもいいのでは?」と意見を述べました。

さらに松川は「UIを改悪したら、UXを改善することもある問題」として、とある空港で飛行機到着からバゲッジクレームまでの道を科学したら、苦情が減ったという例を紹介、登壇者からの意見を求めました。

まず葛本氏は、「それはUIの改悪ではなく、UIの改善だ」とバッサリ。
続いて、鷲山氏は「バゲッジクレームで長い時間待つのと、バゲッジクレームまで長い時間歩くのと、どちらがユーザーにとって、悪いのか? を改修前ははき違えていただけ、それまではユーザーが見えていなかったのでしょう。」と話しました。

続いて、葛本氏のアプリのモックの作り方が他の人と違うということで、作業環境をお見せいただきました。普段はProttなどのサービスを用いて、モックを作るデザイナーも多いかと思いますが、なんと葛本氏は、Keynote(macのパワーポイントのようなソフト)で作っているのだそう。
葛本氏は「スライドインしていく文字のタイミングや、次のボタンが出てくるタイミングなどはコンマ1秒単位でこだわり、一番気持ちのいいタイミングにしています。」と語りました。松川は葛本氏とは以前から知り合いだったといい、当時のエピソードとしてあるサービスのコンペについて話しました。
「あまりにも出来すぎていて、何かの使い回しに違いない、という話になってしまいました・・・。」葛本氏も、「依頼から1週間で完璧に近いワイヤーを作ってしまい、逆に怪しまれてしまいました(笑)」と当時を振り返りました。

最後に、松川より採用や人材についての考えを登壇者にたずねました。
まずは葛本氏が「4年前に起業した当時のメンバーのままで採用は一切していない。関係がうまくいきすぎて、輪に入るのも簡単ではないだろう、という気持ちと、自分がマネジャーになって、手を動かさなくなるのが怖い、という気持ちがあり、採用を考えたことがありません。」と話しました。

また、鷲山氏は「使ってくれるユーザーが幸せになれることを考えてくれる人であれば大歓迎。ものづくりはシビアな面も多く、辛いこともあるけど、ユーザーの喜ぶ姿、楽しむ姿を想像できて頑張れる人がいいですね。」と語りました。

最後に佐藤氏は、「『よしな力』が強い人は、UXが強い、と思いますね。UIデザイナーは目的を明確にして、何かを作るんだと思いますが、UXデザイナーは目的の設計をすることもあります。また、状況に応じて作るものも変わっていくこともあるし、さらにその中でいいアウトプットを出していかなければならなかったりします。そんなUXデザイナーが集まってきたらいいなぁと思っています。」と話しました。

この後は会場から質問を受け付け、最後に少しだけ個人ワークの時間を設け、「わたしにとって重視したいものは○○。」を整理してもらいました。

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登壇者にまずは聞いてみます。
なんと葛本氏と鷲山氏は、お二人とも同じ考えで、葛本氏は「UIは優しさ」と答えました。
「ユーザーがどうしたいのか、クライアントが何を伝えたいのか、を理解して表現する仕事なので、優しい気持ちがないと難しいはず。」とその心を話し、それを鷲山氏は「おもてなし」と表現。「UIで言うところの設計など、ユーザーの気持ちを先回りして汲み取り、それを事前に表現しておくなどの心持ちを重視せざるを得ないのでは?」と話しました。

佐藤氏は「あえて書くなら、「問題提起」と書きますね」と語り、自身はデザインの教科書に書かれていることに納得しつつも、そうではないものを探してしまう、とのことでした。

最後に、会場からも何名かからお話しを伺い、全てのコンテンツが終了しました。

今後のUX Sketchにもご期待ください。