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人工知能vs脳:コンテンツ戦略の未来 -UX Sketch vol.15レポート

2016/10/27

8月15日(月)、Media Technology Lab.(以下、MTL)Caféにて、UX Sketch vol.15が開催されました。今回のテーマは、「人工知能vs脳:コンテンツ戦略の未来」。

UX Sketch vol.12で好評だった、UX DAYS TOKYOとの共同開催となりました。

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今回は英語でご登壇いただいたため、長谷川恭久氏に通訳をご担当いただきました。

<ご登壇者>
Mathias Maul / 言語学者、コンピューター科学者、クリエイティブ・ブティックThe Content Shrinksの創業者。The Content Shrinksはコンテンツセラピーと企業変化を専門としており、企業が読者第一のコンテンツを作成、管理、測定する最も効果的な手段として、”著者第一”のワークフローを導入する手助けをしている。デバッグのプロセスや人間に関して非常に興味があり、企業が組織内外でより効果的なコンテンツの開発につなげられるよう、生産的かつ楽しい職場環境を構築できるようにしている。

Tyler Harder / Maikai K.K. の創業者、クリエイティブディレクター。リードジェネレーションやコンバージョンキャンペーンを成功させるための確かなクリエイティブ戦略を人工知能(A.I.)からのインサイトと組み合わせることに注力している。 ヒルトン、コカコーラ、マイナビ、ラルフローレン、コンラッド、AXAなどの企業を顧客として持ち、デジタルマーケティング分野で17年の経験を持つ。

 

お一人目の登壇者は、Mathias Maul(以下、Matt)氏。

コンテンツ戦略の概論をご紹介いただきました。

AIとコンテンツ戦略はつながりがないように思われがちですが、今後“デザイン”をやっていく上で、避けて通れないトピックだと思い、Matt氏は5年前からコンテンツ戦略Meetupを開催されています。今ではキャンセル待ちが出るほど多くの人に興味を持ってもらえるようになったそうですが、初回の参加者はゼロ、回を重ねるごとに口コミで参加者も増えていき、日本で開催するまでになったそうです。

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まず、コンテンツ戦略、コンテンツマーケティングという言葉について知っているか会場に聞くと、手が挙がったのはほぼゼロ。

コンテンツとは、何かを誰かに伝える最小限のかたまりのことで、あえて定義するのであれば、「何かのアイデア、具体的なアクションをしてもらう時に必要な全てであり、企業の資産のひとつ」と話しました。そして、コンテンツ戦略のひとつがコンテンツマーケティングで、共通していることもあれば、異なることもあると話しました。

続いて、コンテンツ戦略は、どのようにして伝えるべきか、またコンテンツ作成の段階から、どのように進めていけばスムーズに伝えることができるのか、など組織内のシステム(制度)の作り方を考えること、だと紹介。

もちろん、きちんとワークフローを設計して、コンテンツを作ることができればベストですが、分析・情報収集・管理・公開(リリース)など、あまりにもやることが多く、「一生懸命作って」、「出す」ということしかできていないところが多いのが現実で、整合性が取れていなかったり、古いコンテンツが古いまま、ということもよくあると指摘、この原因は部署内だけでなく、部署外や、外注先と同じ意識を持てていないからだと話しました。

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概論の最後に、今日この時間を通して、コンテンツを作る側とコンテンツを受け取る側は相互に関連しあっていることを認識して貰いたいと語ります。

コンテンツを作る側も、受け取る側のことを考えることはもちろん、受け取る側がそのコンテンツを読んだことによって、作る側の組織にどういった影響を与えるのか、など双方の視点を考えて、コンテンツを管理していく必要がある、と話し、Tyler氏にバトンを渡しました。

Matt氏に続いて、Tyler Harder氏にご登壇いただき、「コンテンツ戦略における人工知能」というテーマでお話しいただきました。

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Matt氏にはコンテンツを制作する側と受け取る側の双方を考えることが重要だと話してもらいましたが、コミュニケーションという部分ではかなり重なる部分があるAIという観点から話したいというTyler氏。

この日は、仕事やマーケティングに影響するAIの実例についてお話しくださいました。

絵を書くなど、AIにもクリエイティビティがあるということを示すような事例や、Siriや、画像認識や、チャットボットなど、少し離れて感じられるようなディープラーニングの活用事例も身近なところにも増えてきています。

これらは企業がやっている事例ではありますが、インターネットが生まれてから“技術の民主化”がされ、大企業のリソースを使うことなく、様々なコンテンツにアクセスできるようになってきました。例えば、オープンになっているフレームワークやAPIを使うだけで、ゼロから作るのがとても大変なシステムも簡単に作れるようになってきています。

AIの業界への投資額も多く、盛り上がってきていますが、マーケティングにどういった影響を及ぼすのでしょうか?

膨大なデータがあってこそAIの精度が高くなるわけですが、マーケティングに関して言えば、デジタルマーケティングの部門はコンバージョン率など様々なマーケティングに関わるデータを持っています。

そのデータをどう活用していくかがマーケティングにおけるAI活用のヒントだと話します。

例えば、ペルソナ像を作るときや、SEO対策、価格戦略に活用できると話し、データがあるのとないのとでは、精度がかなり変わってくるといいます。また、過去の実績を基に、どれが効果的なクリエイティブなのかをAIが調べることができるようになるだろうし(Tyler氏が開発中とのこと!)、コンバージョンを上げるために何をしたらいいか、かなり具体的なことまでAIが教えてくれることも今後あり得る、と話しました。

さらに、既に大企業が蓄積しているはずのデータを1つ1つばらばらに見るのではなく、それぞれのデータを総合的に見て、形にしていくのかを考えていかなければ、今後起こりうる破壊的イノベーションに耐えうることができない、逆にそこを解決できる企業ソフトウェアが今必要とされている、と語りました。

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また、既に記事や文章を書くAIも生まれてきていますが、見ると「機械が書いたもの」とわかるものがほとんど、ただ、技術の進化を見ているとスピードが速くなってきているので、この5年10年でコンテンツをAIに書かせることも当たり前な世の中になるかもしれないと話しました。

最後に、AIによって今ある全ての仕事が淘汰されることはないだろうと考えられているが、AIが提示していることに対して人間がアクションを起こすということが増えてくるだろうと予測、それによって人々がもっと活躍できる世の中になっていくことを期待しています、と話を結んでいただきました。

続いて、Matt氏にマイクを戻し、「企業ワークフローへのコンテンツ戦略の導入」についてお話しいただきました。

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まずAIの発展の速さは破壊的イノベーションと言え、爆発的に成長していると思わざるを得ない、もちろんAIは素晴らしい技術だと思うし、今後わたしたちの仕事の何かがAIに取って代わられるかもしれない、でもそれを待つだけではなく、コンテンツに関わる人たちに対して何かできることがあるはず、と話します。

コンテンツ戦略では制作から配信までのワークフローまでを考え、それを実行しなくてはならないと冒頭で話しましたが、それだけではただ人間の行動を決めただけと厳しい言葉を投げかけます。

Matt氏はコンテンツ戦略を実行するにあたり、いかに人間性を持たせ、そのワークフローに関わる人たちの課題をどう解決するかを意識しているそうで、具体的な原則をご紹介いただきました。

1つ目は、「どのコンテンツも目的と計測する効果を決めなくてはならない」ということ。

この時に、単にコンバージョン率や滞在時間などの効果を測定するだけでなく、どういった影響が制作する側に返ってくるのかまでも考える必要がある、と話します。KPIは何なのかを探し出して決めなくてはならない、と話しました。

2つ目は、「リーダーシップというものは、コンテンツ戦略のどの部分にも必須なもの」ということ。

ここでは、渡り鳥の群れを例に出し、リーダーが指示出しだけすればよいのではないといいます。目的に向かってそれぞれが動けるように、相互コミュニケーションが行われている状態がチームのあるべき姿で、そのための設計をするのが氏の役目だそう。

どこにぶつかり合いがあるのかを見つけて、共通のゴールを持てるように共通の価値(たとえば、営業であれば、売上、は共通の価値)を知ってもらうことから始め、群れのように動けるようにすることが2つ目の原則だそうです。

3つ目は、「計画するときには、受け取る側のことを考え、運用を考えるときには、コンテンツを制作する側を考えなくてはならない」ということ。

運用する人たちのことを考えなくてはならないと話してきたが、それが抜けている組織が実際は多く、そこを考えずに「ユーザーのため!」とだけ言っているだけでは、組織内外から指摘を受けるなどうまくいかないと話します。

最後の4つ目は、「コンテンツを組み立てるために、まず組織を組み立てる」ということ。

これまで、Matt氏が話した原則は、全体としてのビジネス戦略といった大きい話から各論までお話しいただきましたが、“大きい話”だけでは足りない、と加えます。

例えば、組織の中の“えらい”人がブログを書けと言っても、このタスクを振られた側はもちろん価値の高い記事をすぐに書けるわけもないので、コピー&ペーストだけするキュレーションメディアのような記事になってしまいます。もちろんそれは目指すべき姿ではありません。きちんと企業全体が誠心誠意コンテンツを作って、お客さまに届けているんだということを伝えていくためにも、その組織で働いている一人ひとりのことをケアしてあげるような提案が必要だと話しました。

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最後に、組織というのは簡単に変わるものではなく、長期的視野をもって変えていく必要があるので辛抱強く続けてほしいと話します。まとめとして、コンテンツ戦略を実行する中で、ワークフローやKPIを考える必要ももちろんありますが、それ以上に渡り鳥の群れのように個人の個性が互いに関係性をもちながらできることを考えていってほしい、そうすれば組織が徐々に改善され、コンテンツ自体も良いものになっていくはずと、会場にメッセージを送りました。