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「IoT×デザイン」 をより深く考える! UX Sketch Vol.6

2015/12/25

12月22日、銀座Media Technology Lab(以下、MTL)Cafeにて、UX Sketch vol.6が開催されました。

<当日のスケジュール>
19:15-開場
19:45-20:05 田中 章愛
20:05-20:25 田子 學(MTDO inc. – 代表取締役 アートディレクター/デザイナー)
20:25-20:45 平原 真(インタラクションデザイナー 造形作家)
20:45-22:00 交流会

今回のテーマは前回に引き続き、「IoT×デザイン」。
前回とはまた違う立場から「IoT」の現場の第一線でご活躍されている3名を講師にお招きし、事例を交えながらお話いただきました。

おひとり目の登壇者は

田中 章愛(あきちか)氏

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普段はメーカーに勤務しているそうですが、今回は業務と関係ない個人活動の範囲でご参加いただいたとのことで、「放課後」に活動している「VITROの田中氏」としてご講演いただきました。田中氏はもともとロボット開発などのハードウェアエンジニアをされており、近頃はIoT関連に携わっておられるそうです。なんと、VITROで活動されている中で制作した超小型マイコン基盤『8pino』(http://8pino.cc/)が日経NETWORKの表紙に使われたこともあるそうです!(https://eb.store.nikkei.com/asp/ShowItemDetailStart.do?itemId=D2-00NN0177B0

そんな田中氏が働きながら感じたことや、「放課後」活動をしている中で経験した、IoT製品つくるときのポイントや予備知識を「IoT製品のデザインではまりがちな12のポイント」と題しご共有いただきました。本記事ではその中からピックアップしてご紹介します。

初めに、チーム・人材について。
「I」と「T」両方の製品化経験者は参加必須だが、さらに開発者だけでなく、評価・検査・管理ができる人材、さらにIoTを統合的にシステム設計できるアーキテクトも必要だ、とお話しいただきました。その上で、経験がない場合は失敗するリスクも大きいので、小さく始めるのも手だと加えました。

次に、IoTにおけるUXについては、実世界のカスタマージャーニーをしっかり設計する必要がある、と伝えました。というのも、アプリなどと異なり、現実世界に「形」があるIoT。使う場所・環境は? 使っていない時は? プレゼントしたい時は? など、実世界のカスタマーがどう体験するかを事細かに設計することを忘れてしまいがちだと、お話しいただきました。

また、田中氏自身が参加した開発チームが最も苦労したのが接続性の問題なのだそうです。
プログラム検証の際、スマートフォンでも機種ごとに微妙に挙動が異なり、エンジニアの頭を悩ませることも多いかと思います。しかし「IoT」はさらに(スマートロックで言う、サムターンといったような)実世界環境が掛け合わされると、「I」と「T」の無数の組み合わせが考えられ、その中でどこをどう割り切るか、ワーストケースを洗い出し、分析する必要があった、と、大変リアルなIoTプロダクト制作の裏側についてご紹介いただきました。

最後に、「泥臭い」部分ばかりを紹介し、ネガティブに聞こえる話が多かったかもしれないが、簡単にプロトタイピングができるようになってきたので、まずは小さく始めることから「IoT」プロダクト制作に積極的にトライしてもらえれば、と参加者にエールを送りました。

おふたり目の登壇者は

田子 學(MTDO inc. – 代表取締役 アートディレクター/デザイナー)氏

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デザイナー/アートディレクターという肩書ではありますが、軸として行っていることはデザインマネジメントといい、田子氏が手掛けるのは、色・形だけではない、もっと広義な「デザイン(=人間の行為をより良い形で叶えるための創造的計画)」であり、社会・団体・企業などの深いところに「デザイン」を組み込んでいるそうです。そのうちのいくつかについて、事例をご共有くださいました。

事例の一つとして、京都府・与謝野町のクリエイティブディレクターに就任し、「デザイン」を組み込んでいる、という、行政との取組についてお話しいただきました。

みなさん、「マリバナ(毬花)」というものをご存じでしょうか。「マリバナ」とは、ビールの原料のひとつであり、アサ科つる性多年草である「ホップ」の松かさに似た花のような部分のこと。これがビールの苦みや香りといった味わいを作り出します。与謝野町では本年度フリーランスの生産者組合がホップの試験栽培に成功しました。寒冷地での栽培が通例のホップは、当初は実現性を疑問視する声もなかったわけではありませんが、できるかどうか分からない可能性の中で、初年度にして収穫に成功したのだそうです。

できないと言われていることをやってみることはとても価値のある経験だった、と話し、このホップ栽培は未来の雇用の創出につながるはず、田子氏はこれを「デザイン」と呼んでいる、と話しました。

このように、デザインの言葉の対象になるものは必ずしも「もの」に限らない、「動き」をデザインすることで、事業の選択肢と可能性を生むことすらある、とお話しいただきました。

最後にご紹介いただいたのは、16Labの『OZON』(http://16lab.net/)という指輪型のコンピューター(デバイスではない!)。
この指輪型の装置に演算能力がすべて入っており、Bluetoothさえあれば、様々な対象を制御することができるそうです。

製造をする際、海外の工場に依頼すればコストを抑えることができるかもしれませんが、技術が盗まれてしまう可能性もあります。それを懸念し、すべてクローズドで進めていた結果、アルプス電気という超一流企業がその技術の高さに驚愕、開発協力を決めてくれたそうです。

既に特許も取得し、大きな可能性を秘めたこの『OZON』ですが、日本国内で認知され、評価を得るにはまだ時間がかかりそうだと言います。しかし、発売前ながらJapan-UK Tech Awards2015でFirst Prize、CEATEC2015ではHome Entertainment分野の優秀賞を受賞するなど、注目を浴びている様子。大変喜ばしい反面、少し残念なことに両賞とも評価をしてくれたのは、海外でした。

こんなに優れた技術が日本にあるのに、日本で評価されないのはさみしいこと、もっと日本を盛り上げましょう! と参加者を鼓舞し、締めくくってくださいました。

さいごの登壇者は

平原 真(インタラクションデザイナー/造形作家)氏

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場所や空間全体を作品として体験させるインスタレーションプロダクトのデザインをメインに、おもちゃのデザイン、スマートフォンのアプリ開発なども手掛ける一方で、大学の非常勤講師も務め、デザイン・アート・アカデミックの三領域で活躍する平原氏ですが、今回はその中でもアートの部分で制作過程についてお話しいただきました。

最初にご紹介いただいたのは、パナソニックのショールームで展示された
『the Color』(http://proto-type.jp/portfolio/the-color/)。
『the Color』の空間内にあるスポイトは色を吸い取ることができ、画面やスツールの中に色を注入することができます。この作品のアートコンセプトを「もし色が物質だったらどのように動くだろうか?」とし、粘度のある流体で、隣の色と混ざり合うのでは? と砂場のような自由な発想で遊べる遊園地的な空間につくりあげた、とお話しいただきました。

個人の作品として、デバイスの中で仮想の植物を成長させ、さらにデバイス内で生態系をつくることができるアプリ『Flowerium』(http://makotohirahara.com/portfolio/flowerium/)、

ブラインド型の照明器具で、「太陽が出ている時にのみ調光の役割を与えられるブラインドに、日が落ちてからも調光ができれば」、と制作された
『Bright Blind』(http://makotohirahara.com/portfolio/bright-blind/)、

石型のセメントの中に磁石を入れ、「個」では何も起こらなくても、つながったときに何かが起こるということを表現した『Corocco』(http://makotohirahara.com/portfolio/corocco/
などをご紹介いただきました。

最後に、作品制作を着想からどうまとめていったか、『Yeda』を例にあげご共有いただきました。
『Yeda』はY字型の積み木で、それぞれの末端に磁石が入っており、自由に組み合わせることで、植物や動物をつくることができます。

平原氏は過去のデジタル系作品と彫刻系の作品をどうにか統合できないかと考え、実際にアプリ内で植物を育てる『Flowerium』と石を磁石でくっつける『Corocco』を組み合わせることで、再帰性のあるものを現実世界でも作れるのでは、と思ったのが『Yeda』誕生のきっかけだったと話しました。

お二方と同じ考えで、制作の初期段階では、まず作ってみる、ラピッドプロトタイピングしてみる瞬発力が非常に大事だと伝えました。その後試行錯誤を繰り返し、寄り道しながらも完成させることができたそうです。
完成後、多くの場所で展示することによりフィードバックを得ることができたことも非常に貴重な経験だったそうで、最初はアート作品として考えていたものの、小さいお子さんの反応がよく、知育玩具として考えるようになった、とお話しいただきました。

最後にまとめとして2つのことを参加者に伝えました。
1つはアイデアを素早く形にすること、試行錯誤を繰り返すことが大事ということ。その理由として、アイデアを考えた本人ですらやってみないとわからないことがあること、人に助けを乞う際も、ある程度まで自分でやってみてからの方が、より高度な助言を得ることができるということをあげてくださいました。

もう1つは、作品の「出口」の可能性を多く持つということ。作品の「出口」を1つに絞らないことで、その都度軌道修正することができると話し、柔軟性を持つという意味で、複数の「出口」を持つと、作品の柔軟性を有効に発揮できるはずと、領域をまたいでご活動されている平原氏らしいアドバイスで締めくくってくださいました。

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レクチャーの後は、登壇者を含めての懇親会。
UX Sketchも6回目の開催となり、何回もお越しいただいている参加者もおり、顔なじみ同士で話す姿や、席についてじっくりと話し込む姿が多く見られました!
UX Sketchを通して人と人のつながりが生まれている姿をうれしく思います。

こうして、今年最後の開催となったUX Sketch vol.6も大盛況のまま閉会となりました。
今年から始まったUX Sketch。 Vol.1の開催時から定員を超えるお申込み、また、多くの方のご参加、本当にありがとうございました!
来年も様々な登壇者をお招きし、様々な角度からUXの知見が広がる勉強会にしていきたいと思っていますので、ご期待ください!

次回は来年1月29日(金)に渋谷・Tech Lab PAAKにて開催予定です。
今回よりも定員を増やしての開催を予定しておりますので、前回・今回と定員オーバーでご参加いただけなかった皆様もぜひぜひご参加いただければと思います。
お楽しみに!

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<左より、VITRO エンジニア 田中章愛氏、MTDO inc.代表取締役 田子學氏、インタラクションデザイナー/造形家 平原真氏>