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『UX界隈で話題になっていること』 -UX Sketch vol.17 in 福岡レポート

2016/11/12

9月27日(火)、UX Sketch vol.17が開催されました。普段は東京で開催されているUX Sketchですが、今回の開催場所はなんと福岡。

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『UX界隈で話題になっていること』と題して、今UXの現場でどんなことが課題になっているのか、どんなことが議論されているのかといったところにスポットを当てた勉強会となりました。登壇者は、東京・福岡でお仕事をされていて日頃からUXに携わる三人の方々。その勉強会の様子をレポートします!

〈ご登壇者〉

大谷 祥(NTTレゾナント株式会社 メディア事業部ポータルサービス部門 UX戦略担当 グロース/SEO)

高山 慶一(イグニスグループ UXディレクター/デザイナー)

花田 恒一(株式会社Groovenauts Rockstar Engineer/UX Fukuoka研究会メンバー)

 

「乾杯!」のかけ声から始まり、参加者同士での自己紹介が始まります。スタートから、みなさんそれぞれ盛り上がっている様子。そして、いよいよ登壇者による講演が始まりました。

一人目の登壇者は、大谷 祥氏(NTTレゾナント株式会社 メディア事業部ポータルサービス部門 UX戦略担当 グロース/SEO)。
『ヲチャーから見るUXデザイン勉強会のトレンド』と『インターネットとUXデザインの微妙な関係』というテーマでお話しいただきました。
(※ヲチャーとはネットスラングで、Watcher=観察する人のこと)

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『goo』というポータルサイトを作っているNTTレゾナントの大谷です。

主な業務はSEOなのですが、UXでいうとサービス横断でユーザーテストの推進をしたり、新規メディアのカスタマージャーニーマップを作ったり、インタビューを通じてペルソナを作ったりなんかもしています。

 

最初に、東京で7月に開催されたこの2つのイベントの参加者数を見て欲しいのですが、200人の募集に500人強、110人の募集に700人強。すごい応募率ですよね。実際に、UX関連の勉強会は毎週一回どこかでは開催されているにも関わらず、どれもすぐに満員になるという状況が続いています。

なぜかと自分なりに考えてみたんですが、ここ数年のUXブームで基礎知識はみんなそれなりに知っている状況になりました。今はそこから「どうやって実践していくのか?」と悩んでいる人が増えて、そのための実践的な勉強会が増えているのだろうなと感じています。実際に、ワークショップ形式などの手を動かすタイプの勉強会も増えてきています。

その中でも今年の前半に話題だったのが「UX戦略」です。

最近はようやく組織の中でもUXデザインが理解されるようになってきました。とはいえ戦略的に組織全体でUXデザインに取り組むことはまだまだ難しく、社内への啓蒙や、メトリクスをきちんと作ること、社外と共創していくことなどが大事になってきています。

アメリカやイギリスなどの政府やIBMがデザインガイドラインを世に出すなど、インハウスのデザイン部門が社内でのプレゼンスを増やすため、ブランディングなどをより意識して外部に情報を発信しているのもこの流れなのではと思います。

もう一つのトレンドは「プロトタイピングツールの隆盛」です。

特にUXデザインツールのAdobe XDは毎月のように勉強会が開催されるほど、注目されています。これは、今まで多く話されてきた考え方や取り組み方などの概念的なことよりも、実践的な手法に対する需要が増えているのだと思います。

さらにツールが高度になってきたことで、インタラクションデザインをプロトタイピングできるようになったのもトレンドの要因の1つかもしれません。UX生トークというイベントでPixateを利用したAbema TVのプロトタイピング事例が紹介されるなど、UX文脈でデザイナーの活躍に注目が集まるようになっています。

最後に、今回の資料を作りながらUX界隈のトレンドを振り返っていたのですが、最近考えていたことと重なる部分を感じたので、少しその話もさせてください。

それはインターネットにおけるUXって何なのだろうかという疑問です。
実際のプロダクトやサービスと違って、インターネットサービスでは実際にユーザーが“利用”しているという意識が少ないのではないかと感じています。

例えば、検索エンジンを使って調べ物をして、出てきたものを大きな「インターネット」の一部として満足するユーザーに対して、サービスとしての体験価値をどのように提供していくのか。

最近のUX関連のイベントで取り上げられる話題をそういう視点で見てみると、面白い気づきが得られるかもしれませんね。

 

二人目の登壇者は、高山 慶一氏(イグニスグループ UXディレクター/デザイナー)。
『UXデザインの接し方』と題してお話しいただきました。

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以前のイグニスはiOSやアンドロイドのアプリを一つあたり5日間ほどで量産していました。今は、いろいろなものをじっくりと作っている会社です。私はその中で、プロダクトのIA(情報設計)やUI設計に職責を持った、いわゆるデザイナーです。

僕がUXデザインを使う人に対してここ数年を通して感じていることは、「UXデザインを自分のプロダクトに取り入れていかないといけない」と思っているだけでは、「けっこうやばいぞ!」ということ。なぜかというと、UXに関する書籍では、UXについてプロダクトやサービスを作っていくにあたって精度を上げていく手法論や、概念のみが書かれていることが多いから。

要するに、僕が言いたいことは、「UXというふんわりとした言葉を、現場で声高々に話すのはやめませんか?」ということ。

そもそも、UXというワード自体が曖昧です。

UXとは、直訳すると“ユーザーの体験”のことです。その定義について『ユーザーエクスペリエンス白書』という書籍では、心理学的なものからビジネス視点まで、また、品質中心的なものから価値中心的なものまで、全ての視点を言い表す事ができないと言い切っています。それを理解した上でUXの言葉の定義を話さなければならないとすれば、『人間中心設計の基礎』に記載されているUXの概念ポイント『(1)主観性、(2)消費者とユーザーを対象とする、(3)品質特性と感性特性の関与』だと僕は考えています。

そこでUXデザインをやっているという人へ「UXに対する知識で、どんな価値を世の中に提供できたの?」という問いかけが大事かなと考えています。今は、ものが溢れている時代なので、競争での優位性を持つためにもUXは大事です。

しかし、同時に出てくるのがUX手法を実行するにあたってのROI(投資対効果)について。すなわち、UXのビジネスへの貢献度ってどれぐらい?という部分と、どれぐらい時間かけたのか?という部分だと思います。概念的であるために社内で理解されないことも多く、チーム内から「そんなことに時間を使っていたの?」と言われてしまうこともあります。ですので「いきなりこの手法使いましょう!」と大々的に導入するよりも、こっそりと始めることがポイントで、成果が出てから手法や思考法を話すことが重要です。そのためには、『鋼の心(負けない心)』と『チーム内外での根回し力(コミュニケーション力)』が必要だと考えています。また、「これは私がやったんです!」というように声をあげて組織内でのスターを目指すことは、チーム崩壊、すなわち、チームメンバー間でもUX破綻が起きてしまう原因ともなりえるので諦めてください(笑)。

まとめると、UXとの接し方としては『縁の下の力持ち』というポジションでこっそりとやることがいいのではないでしょうか? また、難しいロジックは捨てて、ユーザーにとって価値があるものを考えることが大切。会社として考える時は、どんな社会貢献をしようとしているのかを改めて考えるべきです。そして、仲間とは「どうしてこれをやっているのか?」と都度振り返ることも大事で、UXというワードよりも一緒に制作をしている仲間みんながわかる言葉があるならそれを使う方が、プラスになるのではないないでしょうか?

 

三人目の登壇者は、花田 恒一氏(株式会社Groovenauts Rockstar Engineer/UX Fukuoka研究会メンバー)。
『福岡のUX界隈の話題について』と題してお話していただきました。

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「まずは、福岡の『UX界隈』とは何か?、どんな人がいるか?から整理したいと思います。普段は中級者向けの研究会や初心者向けの読書会や勉強会などのイベントを開催しているUX Fukuokaですが、そのまわりにはUI Fukuokaやサイト研究会、九州ソフトウェアテスト勉強会があります。イベントに来ない人から研究会メンバーまでかなり幅広い層に参加してもらっています。研究会メンバーは、ある程度UXのことを理解しているけど、実践はなかなかできない人が多い印象です。

次に、『福岡の話題』について。

関心もない人を含め、初心者の中には「UXのことは全然わかんない」人もいるし、「そもそもUXって何?」という人もいます。僕を含めた中級者の場合、「実務でやりたい」と思っている人が多く、そのためには組織内の経営陣やエンジニアをはじめとしたメンバーにもUXのことを理解してほしいと思っています。

ここからが本題なんですが、二つの話題について紹介します。一つ目は、「えー、それは理想論だよ」という声。二つ目は、「組織に導入するにはどうすればいいの?」という声。

まずは、一つ目の『UXは理想論か?』という話題について。僕も、そう言われたことがあります。
UXの理論などは抽象論すぎて、理想論に見えてしまうのだと思います。しかし、現場的なことを重視してしまい、自分たちの慣れたやりかたを優先してしまった結果、本来の目的意識を失ってしまうことがあります。本来やるべきもっと良いやり方があるはずで、そのためにUXの理論があると思います。とはいえ、頭で理解していたとしても、そういったことを新しく実践するのは難しいですし、毎日やっていることを漫然と続けるだけでは成長しません。今までの自分たちのやりかたとは違う“新しい実践”から、また抽象的な概念の理解のヒントになったり、またそれがより良い“新しい実践”につながると思います。

二つ目の『組織に導入するには?』という話題について。

UXを組織に導入するということは、組織の仕組みを変えること、UXに関する偏見を変えることに近いと思います。だからこそ、難しい問題です。僕自身も失敗だらけで、成功といえる実績もありません。でも、そんな失敗の学びの中からこうしたらいいのではという仮説を立ててみました。それは、専門用語を使わずに相手の言葉で話すこと。相手が何かに失敗して自分で気づかなければ勉強をしないということ。組織の中の一意見だということを自覚すること。それらが大事なのではないかと思います。

最後にもう一つ、UX Fukuokaのメンバーとして伝えたいことがあります。それは、読書会や勉強会などをもっと活用してほしい、そして、みんなでもっともっと成功事例を作っていきたい。そうすることで、福岡のUX界隈をよくしていくことにつながるのではないかと思います。」

 

大谷さん、高山さん、花田さんの貴重なお話が終わり、続いて司会者より提示された話題について、参加者同士ざっくばらんに語っていただきました。

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それぞれ三者三様の考えをお持ちでありながらも、同じような課題に向かって日頃からUXに取り組んでいることがわかりました。

参加されたみなさん、いかがでしたか?共感されることもたくさんあったのではないでしょうか?

UX Sketchの勉強会は、今後も開催する予定です。少しでも興味がある方は、ぜひ次回の勉強会に参加されてみてはいかがでしょう。