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U30「若手UXデザイナーの目指す道」  -UX & Service Sketch #24

2017/04/14

2017年2月20日に開催された『UX & Service Sketch』。
第24回目のテーマは「若手UXデザイナーの目指す道」。いつものUX & Service Sketchとは違い、学生+20代が対象。第一線で活躍する同世代のデザイナー3名をお招きし、これまでの経験をもとにした、体験設計、デザインプロセスなどの思想について伺う貴重な勉強会になりました。

〈ご登壇者〉

實川尚さん(ゼクシィアプリPM/プロダクトリーダー兼RTC インタラクションデザインG チームリーダー)
『自分に期待できているか?』

甲斐琢巳さん(NewsPicks,inc プロダクトデザイナー)
『デザインゴールを“グラフィック”から“感情”に移そう』

上野千紘さん(FRESH! 開発ディレクター)
『FRESH!なサービス開発の1年でわかった現実と悩み』

 

自分に期待できているか?

一人目の登壇者は、結婚・結婚式検索のための結婚準備情報アプリ『ゼクシィ』のプロダクトリーダーを担当している實川尚さん。

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自己紹介から始まり、UXデザイナーが持つべきマインドセットのお話をしていただきました。

冒頭、實川さんはこう口にします。

「UXはユーザーの主観による部分が強く、良い体験をしたかどうかは本人にしか分からない。ユーザー体験を設計するにあたって、ペルソナやユーザーシナリオが役に立つと思いますが、ただそれらツールを利用する、というだけではあまり本質的な解決にはつながっていないんじゃないか、と。
ユーザーの“主観”という、よくわからない壮大ないものに対峙するからこそ、ツールやスキルだけではなく、姿勢やマインドセットが大事になってくると思います。」(實川さん)

姿勢やマインドセットとは具体的にどのようなものでしょうか?
今回、實川さんは直近2年間での経験をもとに、UXデザイナーとして大切な姿勢やマインドセットの要素を語ってくれました。

 

ゼクシィアプリを改善し続けた2年間

今から約2年半前、2014年11月にゼクシィアプリは大幅リニューアルを実施。UI(ユーザーインターフェイス)はもちろんのこと、コンセプトそのものも変わりました。

リクルートが提供するサービスの多くはカスタマーが”検索”をするタイミングで集客し、そこから直接的にアクションにつなげていたのですが、カスタマー調査を徹底的に行った結果、ゼクシィのカスタマーである花嫁は、結婚に対するマインドシェアが極めて高く、頻繁に頻繁に情報収集をしていることがわかったのです。カスタマーのタイムシェアを獲得するために、”検索”よりももっと前段階のフェーズから情報コンテンツを提供し、長期間カスタマーのニーズに寄り添っていくことになりました。

リニューアル後、ダウンロード数、ユーザー数も伸び、タイムシェアを獲得でき順調に成長していたのですが、想定していた高いアクション目標には届いていませんでした。

そんな新たな課題が浮き彫りになったタイミングで、實川さんが『ゼクシィ』アプリの担当に。
どのようにして、高いアクション目標に届かせるか。つまりは、より多くの花嫁(カップル)と結婚式場とのマッチングを生み出していくか。そこに取り組んでいくことになったのです。

實川さんによると早急に課題を特定し、いち早く手を打つことが大切だったため、リニューアル前後でどういった数値変化が起きたのか。ユーザー導線のどの部分で課題が生じているのか、定量と定性の両面から分析していったそう。

「やっていること自体は、課題を特定し、仮説を立て、検証するという一般的なデザインプロセスと変わりないのですが、とにかく数を繰り返しましたね。そうすることで少しずつ効果があらわれてきました」(實川さん)

こうしてアプリの改善を行い、結果も出始めたのですが、その頃KPIマネジメントが上手くできなくなっていました。当初、「タイムシェアを獲得しよう」という名目で始めたリニューアルですが、どうKPIにヒットしているかがわからず……。そこで實川さんはビッグデータチームと連携しながら、適切な指標を設定することで、KPIマネジメントができるようになったそう。

想定していた目標にすぐ到達することはできませんでしたが、それでも常にユーザーの課題を抽出し、そこに対して手を打つ。それを徹底し、逃げずに信じてやり続けた結果、想定していた極めて高いアクション目標に到達。より多くの花嫁(カップル)と結婚式場とのマッチングを生み出し、成果につなげることができたのです。

この経験から、とにかくやり続けることも大切ですが、成果が出るまでやり続けることが何より大切であること。そしてやり続けるために必要なマインドセット、「自分ならできる」と、自己期待を持つことだと實川さんは言います。

「さまざまな正解があると思いますが、『自分にちゃんと期待できているか?』というのがUXデザイナーのスタンスとして大切になるはずです」(實川さん)

 

自分に期待するためには?

また今回、實川さんは自分に期待するためには習慣を変えることが大切と言い、必要な要素を3つ挙げました。

 

1.上司や後輩から言われた期待を常に書き留める

ゼクシィアプリの担当に就任した当時、まだ経験が浅かったため、開発との認識齟齬により要件が抜け漏れることが多々あったそう。周りから「實川に任せて大丈夫か?」という声もあったそうですが、アサインしてくれた当時の部長から「實川にやらせるって決めたんだから最後までやるんだぞ」と言ってもらったり、現在のマネジャーに「期待を裏切っちゃいけないよね」と言われたりしたとのこと。こうして、周囲の人からかけてもらった言葉を書き留めていくことで、周囲の期待を自分自身への期待とモチベーションに昇華させていったそうです。

 

2. “へこたれ”にはその日中に向き合っておく

ゼクシィアプリの改善を進めていく中で、上司から怒られることも多々あったそうですが、實川さんはその経験から、「怒られた日のうちに次にとるアクションを決めていくのが大切」と言います。一度へこたれてしまうと、往々にして放置しがちになってしまうのですが、次とるアクションの第一歩さえその日のうちに決めておけば、へこたれる時間は最小限に抑えられるとのこと。

 

3. ありたい姿と現実のギャップを客観的な目線で埋める計画を立てる

自分一人で「こうなろう」と思うと、自己満足で終わってしまうのですが、一緒に理想像を描いてくれる人がいると、それだけで自分の未来に期待が持てる、と思えるそう。

最後に實川さんは「次の一歩がわかっていれば次に進めますし、進んでいれば自分に期待を持てる。このマインドセットがあれば、成果が出るまでやり続けられると思う」とメッセージを送りました!

 

デザインゴールを「グラフィック」から「感情」に移そう

二人目の登壇者は、ソーシャル経済ニュースメディア『NewsPicks』のプロダクトデザイナーを務めている甲斐琢巳さん。今回は2016年の1年間の仕事を通じて感じた、「デザインとは何か?」についてお話いただきました。

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まず甲斐さんは冒頭、「プロダクト価値を高める終着点がUI発想になりすぎていないか?」と問題提起します。なぜ、甲斐さんはこう思うようになったのでしょうか?

それは1年前に行ったリニューアルの失敗にあります。
ニュースに経営者や教授といった専門家のコメントがつくことが価値である『NewsPicks』をより使いやすいように、初期ユーザーの記事遷移率などの数値を指標にしてリニューアルを実施したのですが、結果的には想定した変化が起こらず……。その原因を、「ユーザー体験をつくる際、UIに凝りすぎていましたね。グラフィックのリニューアルであって、サービスの戦略をリニューアルするものではなかった」と甲斐さんは言います。

ニュースアプリのユーザーが一番に求めることは、いかに短い時間で、いかに出会えていなかった情報と出会えるか。つまりは、「このアプリを使ってよかった」とポジティブな感情が生まれることで使ってもらえるようになるのです。

それを踏まえたとき、甲斐さんは「グラフィックのリニューアルは、ユーザーの行動の一部を変更しただけであって、UIで届けられる価値は一握りだったんじゃないか」と考えるようになった言います。

画面だけでなく、そのプロダクトを使うことによるメリットを効率よく、楽しく感じてもらうこと大切。ユーザーにとって使いやすいプロダクトを作るためには、感情をもっと意識することが重要、という教訓を得た甲斐さんは、とある機能の開発にその教訓を活かしていきます。

その機能とは、2016年末にNewsPicksが発表した「ブック機能」。これはNewsPicksのメインであるニュースというフロー情報とは別に、人気の特集記事を書籍形式のフォーマットでまとめて読める、というもの。これにより、ユーザーは読みたいと思う情報にアクセスしやすくなりました。

甲斐さんはこのブック機能の開発に携わったのですが、その際「読みたいものがいっぱいあるな」と感じてもらうことをゴールにしたそう。知的好奇心を刺激する画面でなければ、ワクワクせず、ユーザーに刺さらないと思ったため、全てを自分の手でデザインしたとのこと。

「見た目を美しくすることが大事であることに変わりありませんが、このブック機能はどれだけ『読みたい』という思いを掻き立たせられるか。その感情をデザインすることが大事なので、かなり力を入れました」(甲斐さん)

まさにデザインのゴールを“グラフィック”から“感情”に移し、ユーザーに使ってもらえる機能を開発できたわけです。
最後に甲斐さんは「サービスとして世の中に良いものを発信していくことを考えたとき、UIにとどまらない価値をデザインしていけると面白くなるんじゃないかな、と思います」と語りました。

 

FRESH!なサービス開発の1年でわかった現実と悩み

最後の登壇者は、生放送配信プラットフォーム『FRESH!』の開発ディレクターを務めている上野千紘さん。今回、唯一のディレクターという立場から「FRESH!なサービス開発の1年でわかった現実と悩み」というテーマでお話をしていただきました。

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FRESH!は2016年1月にスタートした生放送配信プラットフォーム(PCとiOS、Androidで提供)。現在、チャンネル数は約3000で、24時間ライブ配信しています。基本的に無料で利用できますが、一部、配信主が課金制にしている有料番組もあるそうです。

上野さんはディレクターとして、プロダクトのクオリティの責任を持つことに従事。競合や数値の分析、ユーザーテストを実施したり、経営層と現場のプロダクトに対する目線合わせを行ったり、といったことをしているそうです。

リリースから約1年経ったのですが、「FRESH!にも課題はたくさんあって…」、という上野さん。今日はその中でも、よくぶつかる3つの悩みをお話しいただきました。

 

1.FRESH!が想定するユーザーは常に2種類いる

FRESH!は生放送配信プラットフォームということで、“番組を提供してくれる配信ユーザー“、”番組を見に来てくれる視聴ユーザー“の2種類が想定しているユーザーになるのですが、それぞれ求めるものが異なっている部分が多いとのこと。

配信ユーザーは、自分のチャンネルにファンがつくことを求めているため、サービスのどこで露出されているかと、ランキングなどのレポートを必要としているそう。
その一方で、視聴ユーザーは配信主の希望はどうでもよく、単純に興味がある番組や面白い番組を見ることを求めている。それぞれが求めている体験を実現するUIは異なることが多いため、よく課題にぶつかるそうです。

例えば、配信ユーザーからは「フォローするためのボタンを目立たせてほしい」という要望が来て、視聴ユーザーからは「動画を邪魔するものは画面上に置かないでほしい」という要望が来るとのこと。
お互いのニーズを何とか満たすために、番組開始前まではフォローボタンを出しておき番組が始まったら消す、一定の視聴時間を経過したらフォローボタンのポップアップを出すなど、細かい工夫を重ねている、と上野さんは言います。

 

2. 横UIの罠

「ユーザーは動画をきっと大きな画面で見たいはず」、「FRESH!は画質に自信があったので大きな画面に耐えうる」、「生放送サービスとしては後発だったので、新しい体験やスタイリッシュなUIを提供したい」という考えのもと、横画面のUIを採用したFRESH!。

実際に横画面で約1年間運用してきて、関連動画のリスト表示ができないといった、ユーザビリティー的な弊害も……。番組を見始めて、「あんまり面白くなかったな……」と思ったときに、他の番組を気軽に見ることが出来ない仕様だったそうです。

また、リリース当初に比べてコンテンツ数も増えてきたため、ファーストビューでさまざまなコンテンツが見れるよう、下にスクロールできる機能を実装したのですが、全く使われず……。なかなか、他の番組に遷移させることができなかった、と上野さんは振り返りました。

 

3. 動画サービスは良いUIではなく良いコンテンツが集まっているかどうか

仮に使いにくいUI/UXだったとしても、良いコンテンツがあればユーザーは動画を見るように、動画サービスは良いコンテンツが集まっていることが大切です。しかし、当初から良いコンテンツが集まることはなく、上野さんも「良いコンテンツが集まってくるのには時間がかかると思っています」と言います。

そうした中、今も上野さんはディレクターとして良いコンテンツを集めつつ、それを最大限生かすために最高のプロダクトへと磨きをかけているそうです。

最後に上野さんは「「あれをやりたい」、「こうなったらいいな」というのは誰もが言えると思うのですが、それを実現するために、事業成果と良いプロダクトを作るバランスを守ることにディレクターの価値があると思っています。また個人的には、期待値を込められるディレクターになりたいと思っているので、その思いを持ちながらユーザー体験やプロダクトづくりに関わっていきたい」と、今後の意気込みを語りました。

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30歳以下を対象に、デザインの知識ではなく、デザイナーの役割が多様化していく中、今後デザイナーとしてどうあるべきかを知ることができた今回のUX & Service Sketch。エンジニア、デザイナー、ディレクターとして働いていく上でのヒントを得られたのではないでしょうか。

UX & Service Sketchでは、定期的にイベントを行っています。今回は参加できなかったという方も、ぜひ次回のチャンスをお見逃しなく!