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VRマーケティング勉強会レポート -VRビジネス活用事例! VRと相性がいい業界とは?

2017/02/22

1月19日(木)、Media Technology Lab.(以下、MTL) Caféにて『調整さん』主催のイベント、VRマーケティング勉強会が行われました。

今回の勉強会では、VRビジネスに精通した方々をお招きし、VRを使ったプロモーション戦略からマーケティング活用、VR業界の今後の展望まで幅広くお話をしていただきました。

ゲストは、株式会社イードの土本学さん、カディンチェ株式会社の秋山大さん、株式会社DMM.futurewoksの真島隆大さん。そして、モデレーターとして進行を務めてくださったのは、株式会社パネラプロの広田稔さん。

会社のサービス紹介や実例紹介、取り組みなどを一人ずつお話していただいた後、 今度は4人でVRビジネスの現状や今後の展望について、ざっくばらんにお話いただきました。その一部始終を、たっぷりとお伝えしていきます。VRに関わるお仕事をされている方や、VRを使って何かをやってみたいと思われている方は、ぜひご覧ください!

〈登壇者プロフィール〉

【モデレーター】

広田 稔さん(株式会社パノラプロ 代表取締役)

【パネラー】
土本 学さん(株式会社イード)
秋山 大さん(カディンチェ株式会社)
真島 隆大さん(株式会社DMM.futureworks)

広田さんの進行で会がスタートし、一人ずつそれぞれの自己紹介を含め、会社のサービスや実例、VRに関する社内の取り組みなどについてお話していただきました。

トップバッターは、株式会社パノラプロの代表取締役を務める広田さん

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広田さんは『週刊アスキー』などの編集者を経験した後、独立。VRのおもしろさに触れ、専門メディアの必要性を感じて、2014年にパノラプロを立ち上げられました。

現在はVR関連の話題を扱うオウンドメディア『PANORA』の運営の他に、VRに関心のある人を対象にしたイベント事業や360度撮影事業などを行っていらっしゃいます。そこで、この日はマーケティングのお話として「ブライダル業界におけるVRマーケティングのヒント」というお題でお話していただきました。

結婚式の動画というと、従来は新郎新婦だけを映したり、引きで全体を入れたりしていたものが、360度カメラを使うことで周囲をまるごと撮影できるように。何か演出をした時に、お客さんの反応がどのようになっているかなどを一瞬にして見ることができるようになったのだそう。近さ、高さ、広さなどを表現できるのもVRならではだ、という広田さん。

そんなVR動画の活用例は三つ。

一つ目は、「バーチャル来店」。宴会場やチャペルに行かなくてもヘッドマウントディスプレイを装着することで、案内を行うことができ、特に海外ウェディングの案内もより具体的に行うことが可能になったのだといいます。

二つ目は、「来店時の営業補助」。結婚式の回数自体が減っている今、宴会場や式場が一つしかない式場も。実際に下見をしたくてもできない場合に、VRを使えばバーチャル下見をすることができる上に、お金がかかる演出もVR動画を使えば何度も見せることができて、営業効果がアップするのだそう。

三つ目は「式の記録」。これは、コスト的にまだ実現には至っていないものの、将来的には結婚式当日の様子をVRで記録することの実現を考えているのだといいます。

また、最近のパノラプロの取り組みとして、お葬式を撮影し、営業ツールとして活用していただく、という新しい試みもされているのだそう。例えば、ご遺体を洗い、お化粧を施し身支度を整える儀式である湯灌(ゆかん)はどういうことをやるのかあまり一般的には知られていませんが、費用は5~10万ほどとやや高額。お客さんに価値が伝わりにくいのではということから、湯灌のシーンをVR動画で撮ってみてそれをお客さんに見せようということになったといいます。湯灌の成約率が7割だとしたら、それを8割、9割に上げていくという提案なのだそう。

インターネットやスマホの初期の時のような盛り上がりを見せている、現在のVR業界。「もっとマーケティングにもVRを活用していきたい。ご縁がありましたら、ぜひ一緒にやりましょう」そんなメッセージで、広田さんのお話がしめくくられました。

 

続いてお話いただいたのは、カディンチェ株式会社の秋山さん

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カディンチェはもともと、ソニーの映像関係のエンジニアが2008年に立ち上げた会社。研究開発や受託開発を行っていて、VRという言葉が流行る前からVR事業を行ってきたといいます。

VRには、大きく分けるとCG系か実写系の二種類があります。カディンチェでは主に、後者の実写系をメインにお仕事をされているのだそうです。その中の一つ目の例は、360度の静止画。バーチャルツアーといったように、会場などをバーチャルな世界で体感できるというものです。二つ目は、360度の動画。そのような制作をしながら、動画を配信するウェブプラットフォームの展開もしているカディンチェ。

PANOPLAZA MOVIE』という一般の方が動画をアップして360度の映像を見られるサービスを展開されています。YouTubeなども今でこそ対応していますが、カディンチェではYouTubeよりも早い、2014年12月から提供していたのだそう。YouTubeとの違いは、広告が入らないところとコンテンツに課金ができるところだそうです。

また、OEM販売も展開しており、ハコスコさんの『ハコスコストア』やメガハウスさんの『BotsNew VR』というVR端末のおもちゃなどのプラットフォームも提供されているのだそうです。

コンテンツの導入事例としては、代表的なのはNHKさん。
NHK ONLINE』では、一面から切り取った映像だけではなく360度から見ることによって、違う角度からのジャーナリズムを提供できるのでは、との思いで、様々な動画を紹介されています。例えばパラリンピックの選手の映像を撮ってみたり、福島の現在を撮ってみたり、選挙の街頭演説の様子を撮ってみたりということを予定しているのだそうです。

そして最後に、実際にうまくいった導入事例を紹介していただきました。
一つ目は、自動車メーカーのジャガーランドローバー。2015年6月というかなり早い段階で、VRをマーケティングに導入した事例です。新車種の発表の際に、刷新したブランドイメージをうまく伝えたかったそう。そこで、話題性があり最先端のイメージがあるものということでVRを導入されたのだそうです。実際のコンテンツでは、自分自身が助手席に座って、運転席にテニスプレイヤーの錦織さんが座って運転してくれるというもの。これをVR動画として日本全国のディーラーに配布し、観れるようにしたのだといいます。おかげで、実車が配備される前からプロモーション活動を行うことが可能になったそうです。

二つ目の事例は、セイコー。
この場合は、ヘッドマウントディスプレイを使わずに、『zSpace』を用いたそう。『zSpace』は、専用のメガネをかけると、その人に向けてディスプレイのものが浮き上がってきたり、専用のペンを使ってそれを操作することができるインタラクティブディスプレイです。『グランドセイコー』のムーブメントの精密な美しさや性能のすごさは、一般の人にはなかなか伝わりにくいもの。そこで、セイコーミュージアムで『zSpace』を使って、その性能のすごさを一般の人に伝えていくことになったそうです。ブランドイメージを上げることと、それによって購買意欲を向上させることが目的でしたが、非常に好評価で、ミュージアム以外の場所で展開できないかを現在検討中だそうです。

三つ目の事例は、ダイワハウス。
送客率のアップを狙ってVRを導入した事例。ダイワハウスでは日本全国のマンションを販売していますが、その中でも沖縄のマンション購入者の半数以上が沖縄県外や首都圏の、実際の物件をなかなか見ることができない人なんだとか。沖縄の物件を探している人に向けて東京のサロンで販売を行っていますが、なかなか現地の雰囲気や物件のよさが伝わらない。そこでVRを使って、沖縄にいるかのような体験をお客さんにしてもらえれば、現地へ送客できるのではという思いで企画したのだという秋山さん。

これは、今後もVRはいろいろな企業で使える可能性が多いにある、とおっしゃられ、秋山さんのお話が終わりました。

 

次にお話いただいたのは、株式会社イードの土本さん

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イードは、インターネットメディアを運営している会社。IT、車、教育、映画、ファッション、アニメ、ゲームなど20ジャンルほどのメディアがあり、土本さんも半年前まではゲームのサイトの編集をしていて、現在は社長室でM&Aや協業の検討も進める傍ら、VRの担当しているのだそうです。メディアの主流が新聞からラジオへ、そしてテレビからスマホになって、次は何だろうと考えた時に、VRという可能性もあるのでは、との思いで今の事業を進められているのだそうです。

イードでのVRに関する取り組みは二つ。
一つ目は、ファン特化型のVRコンテンツ。今現在、ヘッドマウントディスプレイを持っている方や、VR動画を気軽に見られる環境にいるユーザーは多くありません。それでも、熱のあるジャンルはあるはず。そのジャンルであれば、わざわざヘッドマウントディスプレイを購入してでもVRコンテンツを手に入れようというユーザーは多くいるのではと、現在力を入れていらっしゃいます。
その一つの取り組みとして、アイドルや声優と触れ合えるかのような体験ができるコンテンツをつくっているといいます。高画質・高音質の3D映像に特化し、日々技術を高められているのだそう。

二つ目の取り組みは、イードで運営する各ジャンルの専門メディアでVRをどのように活用していくかを試行錯誤しながら追求すること。
テキスト、動画、そこにVRが続くような、今よりももっと気軽にVRに触れられる時代が来るのではと想像しながら様々な可能性を模索されているのだそうです。

今後のVRの課題は、ヘッドマウントディスプレイを持っていない人や、まだまだVRを知らない方が多いという問題にどう立ち向かっていくかということ。その辺りの啓蒙活動も進めていくことが課題だとおっしゃった土本さん。「メディアの発信者として、カメラマンやライターがVR用カメラを持って取材に走りまわる時代を実現したい」との言葉で、しめくくられました。

 

最後にお話いただいたのは、DMM.futureworksの真島さん

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幼少期から大学卒業まで海外で過ごされ、その後日本に帰国してからはさまざまな業界を渡り歩いた後に、DMM.futureworksに入社されたのだそうです。2015年にオープンした『DMM VR THEATER』は、世界初の3DCGホログラフィックエンターテイメント常設劇場。まずは、その紹介動画を見せていただきました。DMM VR THEATERでは、ヘッドマウントディスプレイは使わずにペッパーズゴーストという原始的な舞台演出法に加え、特殊な技術を用いることで舞台上にあたかも人やキャラクターが存在しているかのように見えるのだという真島さん。

最近の公演事例でいうと、『ワンピース』。
これは、もともとお台場夢大陸で開催された公演をホログラム技術でパワーアップさせた公演なのだそう。
そして、『プリキュア』。
真島さん自身も最初はプリキュアの存在を知らなかったものの、初めて見た時にはあまりのリアルさに「ほんとうにプリキュアが舞台にいる!」と驚かされたのだといいます。その他にも、人と映像を組み合わせた公演も行っているのだそう。背景にも映像を映すことができるので、ホログラム、人、背景の三層のコラボレーションによる公演が実現可能になったといいます。

『DMM VR THEATER』の収益構造は、通常の映画館といった劇場とほとんど変わらないのだという真島さん。ただ、公演動画をヘッドマウントディスプレイで見る動画として再度配信できることが、メリットではないかと考えられているのだそうです。

公演形式は、一般的なライブ会場と同じような会場貸し、DMM.futureworksがライセンスを持って行う公演、協同開催の三つのパターンがあり、特に協同開催が一番多いのだそうです。

ここで、今まで『DMM VR THEATER』で行った過去の公演事例の紹介へ。
X JAPANのhideさんをこの世に蘇らせるという企画のもと行われた、『DMM VR THEATER』のこけら落とし公演では、X JAPANのYoshikiさんも「ほんとうに、舞台にhideがいる!」と認めてくださったほど。

もう一つは、『ふなっしー』のフル3DCGアニメーション。完全オリジナル作品でフル3DCGのふなっしーが活躍する内容になっているそうです。

そして、スピーチイベントの『TED』。プレゼンテーションの内容をホログラムにして公演するという実験的な試みをされたのだそう。これは、今後記者発表会などに活用してもらえそうだと考えているのだといいます。
また、その他にも『HOLOGRAPHIC VR CONTEST』という、若手を育てるイベントも開催されているそうです。

ここからは、マーケティングについてのお話をしていただきました。

現在はVRを、企業の新たなマネタイズポイントとして使ってもらっているという真島さん
。例えば、アニメやゲーム関連の企業で、アニメからキャラクターが飛び出すことで、新たなコンテンツとなり、収益を生み出すのではないかと考えていて、実際にそうした成果を上げている企業も多くあるといいます。例えば『プリキュア』の場合、今までは映画とイベントの繰り返しだったところ、今後は『DMM VR THEATER』での公演を映画に続く定期コンテンツとして使っていきたいとのお話も出ているのだそうです。

ここからは、チケット代金のお話へ。
『DMM VR THEATER』では、過去作品の事例として2,000円と5,800円の二つの価格帯のチケットがあるそうです。『ふなっしー』のような公演は、どうしても映画と比べられてしまうことが多く、(映画と同じくらいの)2,000円が価格設定としては限界なのだそう。
5,800円はコンサートなどと同じ価格帯。例えば、ゲーム内のキャラクターがそこにいるかのような感覚になる舞台に仕上がったライブ形式の公演は最大限、劇場の強みが活かされていたそう。この公演後にはゲームユーザーの復帰率が上がり、同時に継続率も上がったのだといいます。

このように、VRはファンの心に深くつき刺さるロイヤリティマーケティングであったり、記者発表会などでの3DCG映像を使った新しい表現や話題性を追求したものを提供できるのではとおっしゃる真島さん。最後に、国内外にシアターを増設してそのシアターをプラットフォーム化していくということや、コンテンツ配給を活性化せていくこと、ライブビューイングを実現させていくことを今後の展望としてお話いただきました。
最後に『DMM VR THEATER』へ内覧会というかたちで招待してもらえるといううれしいお知らせも!真島さん、ありがとうございます!

 

こうして、サービスや4社それぞれのVRに関する取り組みなどをご紹介いただいたところで、いよいよトークセッションへ。いくつかのお題に沿って、登壇者の方々にざっくばらんに語っていただきました。

 

VR業界へ飛び込んだきっかけ

広田さん
まずは、みなさんがどのように興味を持ってVR業界へ飛び込んだのかを教えてください。

真島さん
僕は、エンタメに関する仕事をしていきたいと思ったことと、日本のテクノロジーやサービスで世界に挑戦したいと思っていた時に、代表の“世界に挑戦していきたい”という言葉を聞いて、これはおもしろそうだなと思ったんです。それと、ホログラムやCGの細部までこだわるところが日本人ならではだと思っていて、そこをビジネスとして世界へ発信していけたらなと。

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広田さん
初めて『DMM VR THEATER』で公演を見た時は、どう感じましたか?

真島さん
映像表現は無限大だなと思ったし、衝撃を受けましたね。

秋山さん
私がカディンチェに入社したのは、去年の6月です。もともとデジタルの分野が好きではありましたが、VRに関して特に詳しいわけではなかったんです。でも、以前から知り合いだった当社の代表に誘われてVRを体験してみたら、これはすごいと。それで、この業界に飛び込みました。

広田さん
「実際に、VR業界に飛び込んでみた感想はいかがですか?中に入ってみるのと外から見ているのとでは違うと思うんですが…?

秋山さん
中で見ていると、ダメかなと思う時もあるし、これはイケるかなと思う時もあります(笑)。でも、長期的に考えれば明らかに品質も上がってきているし、可能性はあるなと思いますね。

土本さん
僕は以前ゲームのメディアを担当していたので、その関係でVRを体験させてもらって。最初に体験した時は、衝撃を受けましたね。まわりのゲーム関係者の知り合いもけっこう興味を持っていて、これは何かしらビジネスになるのではと思って興味を持つようになりました。僕も、たまにVRは厳しいのかなと思ったりもするんですけど(笑)、でも、ひとつの表現手法として、いずれはみんなが使うようになるんじゃないかなと思っています。

なぜVR業界が今、活況なのか

広田さん
みなさん、それぞれの人生があって、今ここに集結しているんですね。やはり今は、VRが活況だと言えるんでしょうか?

秋山さん
そうですね、明らかにうちの事業も伸びていますし、『Oculus Rift』などのヘッドマウントディスプレイが出てきたことによって、圧倒的に展開がしやすくなってきました。だからこそ2016年はVR元年と言われていて、今はすごく盛り上がっていると言えると思います。

広田さん
案件自体も、増えてきているんですか?

秋山さん
そうですね、2015、2016年と明らかに増えています。

広田さん
ちなみに、特にニーズが高い業界はどこですか?

秋山さん
実写系のVRで言えば、不動産が多いですね。後は社内コンテンツですけど、教育関係、トレーニング関係に使いたいという要望もあります。それから、映像とかを配信している会社さんからもともと持っていたコンテンツをVRで配信したいという声もあります。

真島さん
『DMM VR THEATER』は2015年の9月にオープンしたのですが、お問い合わせはとにかく増えましたね。

広田さん
それじゃあ、認知度が高まってきているんですね?

真島さん
はい。認知度も高まってきていますし、後は劇場名にVRと入っているだけで検索でも相当引っかかっているみたいで。近所の方からも、以前は“倉庫みたい”という声が多かったのですが、最近では「VR THEATERだよね」と言ってもらえるようになってきました。ただ、どうしてもみなさんVRというとヘッドマウントディスプレイを想像されるので、ARに名前を変えたほうがいいのかなと個人的には思うことも…。

土本さん
VRは、まわりの反応もけっこうあるし、注目を浴びている業界だと思います。だからと言って、稼げるかは…(笑)。そのあたりは、今後の課題ですね。でも、今はグラビアのVR映像とかをつくっているのですが、僕自身、クリエイターとして楽しいんですよ。これがほんとうに大きなビジネスに成長していったらいいなと思っていて、それに向かってやっているという感じなんですけど、その業界に身を置いている幸せや充実感は日々感じていますね。

広田さん
なるほど!スマホの上り始めの時と、ちょっと近いものがありますよね。

土本さん
そうですね。すごく熱量のある人も多くて、道もそんなに固まっていないのでチャンスもいっぱいありますし、そういう意味ではビジネスとしても、この道はいいのかなと。

広田さん
私自身もVR関連の取材をしていて思うんですが、2015年くらいは大企業にVRの話を持っていっても“何それ?”という感じだったんですけど、去年はけっこう大企業も取り入れてきているなと感じますね。その辺りに対して、みなさんはどう思いますか?

真島さん
そうですね、下手したら競合になりかねない映画館さんとかも興味を持ってくれています。いろいろな業界が、VRを無視できない時代になってきているんだろうなと。それをどう活かすかが大事なんですけど、活かそうと思えばどんな業界でも活かせると思うんですよね。うちはエンタメに振り切っていますけど、今日、他のゲストの方のお話を聞いたりして不動産もありだなと思いましたし、関わろうと思えばどんな業界も関われそうですよね。

秋山さん
いろいろな会社さんと話していると、みなさんVRに可能性を感じていらっしゃって、何らかのかたちで検討をしてくれます。VRというワードは知っているけど体験したことはないという方も、体験すると“やってみようか”という風に言ってくれるので、うちとしては、進めやすいのが今の状況ですね。

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土本さん
そうですね、実際に体験してもらうと割とインパクトがありますよね。逆に体験しないと伝わらないというデメリットもあるんですけどね(笑)。でもやっぱり、体験してもらえればマインドを変えられるほどの力が、VRにはあるので。あとは、「みんなやっているからうちもやろうか」みたいなムードもありますね。

 

VRマーケティングとは

広田さん
VRを使ってどうマーケティングをしていくかという話になるんですが、実際に一番多くの事例をお持ちなのはカディンチェさんでしょうか?秋山さん、その辺りはいかがですか?

秋山さん
VRマーケティングという観点だと、うちが多いかもしれないですが、どっちかというとブランディング用途よりも売り上げにつながるようなプロモーション・営業用途の事案が多いんです。なので僕らは、VRをイベントなどに使って話題性を高めるという使い方ならいいと思っているんですけど、VRを使って企業の伝えたいメッセージを伝えるという使い方は考えづらいなと思っていて。マーケティングという意味ではリーチを増やさなければいけないんですが、ヘッドマウントディスプレイがまだ普及していないので、リーチが増えないですよね。なので、ヘッドマウントディスプレイを置いてお客様にVRを見せられる拠点があるところに提案をしていっているという感じです。

真島さん
僕は、DMM.futureworksに入る前はソーシャルゲームのプロモーションをやっていて、その前はMMORPG関連のリアルイベントをやっていました。さらにその前は、代理店でイベントを企画する側だったので、いろんな観点で考えてみたんですけど…。やっぱりどうしてもVRはメインではなくて、補助的な立ち位置になりがちかなと思うんですね。でも、何をゴールにするかにもよりますが、ファンの心に深く刺していくという意味では活用しやすいのかなと思っています。

土本さん
うちの場合は、マーケティングなのかプロモーションなのか販促なのか、非常に曖昧な領域ではありますが、VRは表現手法なのであらゆる用途で使えると思います。でも、まずは車に乗った気分になってもらうとか、式場に行った気分になってもらうとか、そういうところからいけば間違いないと思いますね。VRは、そこから始まっていくのかなと考えています。

 

VRをマーケティングに活用する際のポイント

広田さん
VRをマーケティングに活用する時に、気をつけるポイントや注意をするところはどんなところだと思いますか?

秋山さん
注意するところでいうと、VRにはいくつか制約がありますよね。実写系でいうと、主体となるものがきちんと見えるくらいの画質なのかとか。画質自体はよくなってきているんですけど、遠くを撮ることが難しかったりします。あとは必ずしも没入感のあるHMDでを使って見られるわけではないかもしれないということを考えた上で企画を立てるとかですかね。逆に近いものだったらきれいに撮れるので、近いものでVRにしたらいいものは何かという風に考えることも大切だと思います。

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広田さん
業界に合わせて、どのような使い方が合うのかなど接点を探して落とし込んでいくという感じですか?

秋山さん
そうですね。あと、VRはコストがかかるので、そもそも販促費に収まるのかということもありますので、販促費にコストをかけられる領域や業界を探して営業していくという感じです。

広田さん
同じように実写系をされている土本さんは、注意したいポイントなどについて、いかがですか?

土本さん
そうですね、VR酔いとか…。あとは、今まで映像を撮ってきたカメラマンの方が、360度になると戸惑うこともあったりしますし、クライアントさんにも感覚値がないので、「こんなような映像にしたい」と言われても、それをVRに落とし込むことが難しかったり、そもそも関係者のほとんどが、VRに慣れていないというところがありますね。グラビアの撮影をする時に脚本を書いてみたものの、実際に撮ってみるとあまりおもしろくなかったり(笑)

広田さん
関係者全員の間に、VRに関する感覚の共有がなされていないということですよね

土本さん
そうですね。あと、僕らが撮っていて難しいなと思ったのは、遠景での撮影ですね。例えば観光地の撮影とかも、意外と難しいと思います。

真島さん
そうですね。うちの社内で宣伝方法を検討する会議をする時にいつも言っていることなんですが、VRは手法のひとつなんですよね。うちは“VR THEATER”なんて名前をつけて先進的に見せていますけど、ビラ配りもしますからね。

広田さん
ええっ(笑)!きちんとリアルでも行動されているんですね。

真島さん
そうなんですよ。やっぱりリアルで宣伝していかないとダメだと思うんですよ。後は、一度だけ駅のまわりでVRを体感できるイベントをできないかとやってみたんですけど、みなさんけっこう怖がるんですよね。ヘッドマウントディスプレイを頭につけられるという感覚にまだ慣れていなくて。

広田さん
ああ、それはすごくわかりますね。

真島さん
そうなると、せっかくつくったものも伝わらない。どう伝えていけばいいのか、その辺りが難しいなと思いますね。

広田さん
大人数で体験できないところも、今ちょっと問題になっていますよね。私もイベント会場でデモをしたりするんですけど、6割くらいの方が“いいです”って言って逃げていって、3割くらいの人が声をかければ被ってくれて、1割くらいの人が“これ、VRでしょ!”っていう風に、興味を示して自分から近寄って被ってくれるという感じで。意外とみんな、知らないものに対して恐怖心が強くて、被ってもらうまでが大変だったり…。逆に一人が被って“わあ、すごい!”とか叫んでいるとまわりがけっこう寄ってきて。それが女の子だったりすると、おじさんたちが寄ってきて被ってくれたりとかはするんですけど(笑)

土本さん
そうですね。後は、“これなら普通に動画でいいじゃん!”とか思ったりするパターンもありますよね。

広田さん
そうですね、そうならないようにしないといけないですね。でも、無理やり人を並べて360度撮るとかも、演出としてはいいかなと自分は感じたりもしますね。後は先ほども言いましたけど、近くてうれしいものや、高さを表現したいものをコンテンツに入れていくといいと思いますね。

 

KPIをどう設定するか

広田さん
これは難しいお題だと思うんですが、みなさんはどうお考えですか?

真島さん
今日参加してくれたみなさんの誰の期待にも答えられないかもしれないんですけど…従来のものと変わりはないのかなと思いますね。リーチでいうとデジタルには勝てないし、深く心に刺すということをKPI化するにはどうすればいいのかわからないし。これを解決していくには、ブランディング指標を別で立てようかなと思っています。

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広田さん
ブランディング指標というと?

真島さん
プロモーションの予算をとる時に、ブランディング予算とは別にとって、それぞれにKPIを設置しようと。プロモーションの方はしっかり効果がとれるようにして、ブランディングの方は昔ながらではあるんですけど、まずは認知度調査からかなと。あと、ヘッドマウントディスプレイもやらなければと考えています。

広田さん
VR THEATERでも、ヘッドマウントディスプレイをやるんですか?

真島さん
やろうと思っています!一つは宣伝に使ってみたいな、と。もう一つは、アイドルユニットのライブが始まる前に、来場者のお客さんにヘッドマウントディスプレイを被ってもらって、そのアイドルの控え室をVRで見せてしまおうと(笑)。それで、“外してごらん”みたいにいい感じの声で言われて外してみると、目の前には彼らがいるというような…。

広田さん
カディンチェさんがつくっているDMMアプリでCMが流れるとか、どうですか?

真島さん
後で秋山さんと話します(笑)!

広田さん
カディンチェさんの場合は、どうですか?お客さんとの話し合いの中で、KPIを設定していくとかいう話になっていくと思うんですけど。

秋山さん
そうですね。真島さんが言うようにそもそもKPIって、シアターならシアターであるべきで。シアターがみんな同じKPIを持ったら同じものしかできないわけで、どういう風にやっていくかが事業の差別化そのものなんですよね。そうなると、あんまり一つの答えには絞れないですね。それぞれのKPIに沿ったVRの使い方を考えていく必要があるので、VRを使いたいから無理やりKPIをつくるとかいうのは本末転倒です(笑)。
ちゃんとやりたいことがあって、KPIを伸ばす手段としてVRがあるのなら使えばいいと思いますね。そもそもKPI設定をちゃんとできていない会社も多いので、そういう会社がVRを使おうとしても混乱すると思いますね。

それから、事業に合わせてやるのもまさしくなんですが、VRはデジタルなのでデータがとれます。これからは、お客さんが何を見ているのかとか、いろんなデータがとれるようになっていくと思うんですよ。そうなってくるとマーケティング効果がわかって、従来だと設定できなかったKPIが設定できるようになって、可能性が広がるということはあると思いますね。よくストーリーをつくってみたんだけど、“売り”としているところに注目してくれてなくて、お客さんは実は意外なところを見ていたりするということがわかったり…。

広田さん
そういうものがデータとして拾えることは、けっこう重要だったりしますよね。土本さんは、いかがですか?

土本さん
メディアにVRコンテンツを置くという考えでいくと、再生回数がどうであるとか再生完了がどうであるとか、けっこう普通のKPIで図れるかなと。例えばタイアップ記事の代わりにVR動画をやりますかとか、そういうこととの比較になってくると思うので、シンプルに動画が見られたか見られていないかで評価していくのかなと思います。今はVRを使うことでニュースに取り上げられたりするので、非常にKPIを設定しやすいのかなと思いますね。PANORAさんでも取り上げてもらってありがたいです(笑)

 

今後のVR業界の展望とは

 

広田さん
それでは最後に、VR業界の今後の展望についてと、そこにどのようにみなさんが関わっていくのか、お伺いできますか?

土本さん
全体の流れとして、スマホの性能がもう少しよくなって、視聴環境はさらによくなっていくのかなと。スマホをヘッドマウントディスプレイに入れるだけで今までできなかったようなおもしろい体験ができてしまうので、VR体験可能ユーザーはどんどん増えていくと思いますし、それを後押しするようないいコンテンツをつくっていくということが僕らのやりたいことですね。そうすると、メディアで幅広い人が動画を見るのと同じようなかたちでVRを視聴することができる。そうなると、僕らもつくりがいがありますよね。

それと並行して、撮影をする側ももっと改善していかなければいけないなと考えています。やっぱり記者が写真を撮るのと同じくらいの手軽さでVRを撮ることができるようになっていくと思うので、そういう5年後を見据えて、車の試乗動画とかをつくる意味があるんだろうなと。当社にはアニメやゲーム、教育とかいろんなメディアがあるんですけど、その各メディアでVRを使って情報を届けることが意味のあるフォーマットを発明していきたいですね。後は、DMMさんからそろそろグラビアのVRコンテンツが発売されるので、みなさんに買ってほしいですね(笑)

広田さん
すごいですね、みなさんつながっているじゃないですか!私も入れてくださいよ(笑)

土本さん
VRのコンテンツも、ある程度売れるようになっていくとおもしろいコンテンツがどんどん出てくると思います。今後は売れる手法とかマーケティング方法とかも研究していきたいなと。

真島さん
二つの観点からお話させていただくと、劇場というビジネスをやっていく上での展望としては、海外に進出することですね。まずは、中国につくろうと話を進めている最中なのですが、日本のエンタメ系は中国でなかなか成功事例がないので、自分たちが道を切り拓いて、日本の他の企業が進出しやすいような土壌をつくれたらいいなと思っています。

個人的なところで思うことは、どうしても宣伝をする人間は社内でもお金を使うポジションじゃないですか。でも、VR はいいものをつくってファンがついてくれればお金も回収できると思うんです。そうすれば、お金を稼ぐ舞台にもなり得るはずです。

秋山さん
そうですね、VRは活況とはいえ難しい面もあるというお話があったと思いますが、うちは割と業界の中で長くやってきています。でも、突き抜けるものがあるかと聞かれれば、まだないんですよ。なので、突き抜けるサービスというものをつくっていく。そのために、成功事例をひとつひとつ積み重ねていくということが必要かなと。個人的にはライブ配信を突き詰めていきたいですね。

広田さん
昨年度も、ライブ配信はされていましたよね?

秋山さん
はい、『billboard』さんで。すごく好評だったみたいなので、今後は課金してもらえるくらいのレベルのものにしていきたいなと思っています。
あとは、真島さんと同じで海外展開ですね。VRは体験という意味では言語は関係ないと思っているので、海外展開もやりやすいのかなと。

とは言いつつ、新しいイノベーションも実はいろいろとやっていきたいと思っています。アメリカのベンチャーでもやっていないような、世の中のどこを探してもないような、新しいVRのコンテンツをつくっていこうと、進めているところです。

広田さん
なるほど、みなさんありがとうございました!

 

こうして、VR業界の真っ只中で奮闘されている4人の方々によるトークセッションが終了しました。第一線で活躍されている方たちならではのあるある話や、苦労話をたくさん聞くことができ、参加者のみなさんはたくさんの刺激を受けたのでは?

そして勉強会は、登壇者を交えての懇親会に突入!イードの土本さんとカディンチェの秋山さんが実際にヘッドマウントディスプレイを持ってきてくださり、体験コーナーも設けられました。

一つは、カディンチェさんが大和ハウスさんに提供した、自分が沖縄に行って現地で過ごしているかのような体験ができる映像。
もう一つは、イード土本さんがお持ちいただいたグラビアアイドルが自分の目の前にいるかのような映像で、参加者のみなさんは代わる代わるヘッドマウントディスプレイを装着して体験していました。実際に体験してみると、まるで別の世界にいってしまったかのような不思議な感覚に!特にグラビアアイドルのVR映像には、多くの方がまるで目の前にアイドルがいるかのような感覚に陥ったようで、ヘッドマウントディスプレイ越しにもそんな表情が伺えました。

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参加者のみなさん、今回の勉強会はいかがでしたか?お仕事で普段からVRに接しているという方も、少し興味を持ち始めたばかりという方も、「VRマーケティング」というテーマでのお話しは貴重な経験になったのではないでしょうか?

今後も、さまざまな分野のプロフェッショナルをお呼びして、多種多様の勉強会を行っていく予定です。普段は接することのできない、豪華な登壇者とも直接お話できるチャンスも!今回は参加できなかったという方も、次回はぜひ参加してみてくださいね。